8年ぶりの来日間近! 喜びと感動の大ダンスパーティー、レディー・ガガの最新ライブレポート。

8年ぶりの来日間近!  喜びと感動の大ダンスパーティー、レディー・ガガの最新ライブレポート。 - pic by AKEMI NAKAMURApic by AKEMI NAKAMURA

注意:内容的にはかなりのネタバレなので、内容を事前に知りたくない人は読まないほうがいいです。


「私を観るために、これまでで最大の観客が集まってくれた」とレディー・ガガは彼女の地元であるニューヨーク、ニュージャージーのファン55000人の前で、涙ながら語っていた。

8月11日に、メットライフ・スタジアムで行われたライブは、ガガにとっても、ファンにとっても、感動的な瞬間が何度もありながらも、しかし最終的には、このファンの気合にも分かるように、
https://rockinon.com/blog/nakamura/203828

こんな場をガガが用意してくれたんだから、とにかく、弾けまくり、踊りまくり、最大限の喜びを見出していこうという2年間待った甲斐のある最高のライブとなった。

8年ぶりの来日間近!  喜びと感動の大ダンスパーティー、レディー・ガガの最新ライブレポート。 - pic by AKEMI NAKAMURApic by AKEMI NAKAMURA

7月17日にドイツで開始したこの『クロマティカ・ボール』は、日本を含む世界20都市で開催されるスタジアムツアーだ。

●セットは「ブルータリズム」
ガガが事前にインスタしていたけど、ツアーは、「ブルータリズム」に影響を受けたというステージ。ブルータリズム、英語だと残忍性ということだがガガによると建築だということ。調べたら、打ち放しコンクリートなどによる荒々しい外観の建築で、ウィキペディアでは、冷酷で厳しい獣のような手法を用いた表現主義と書かれている。

なるほど。実際、セットに限らず、衣装も含め全体的にガガの置かれている状況が過酷だったり、どこか冷酷さと、残酷な設定の中で、ダンスパーティーが繰り広げられているという光景が広がっていた。

つまり、今の状況をアートに反映させながら、メインストリームのポップとして表現してきたガガならではの思い切り力の入ったステージでもあったということだ。さらに、アルバム『クロマティカ』で、彼女のトラウマや内面の悪と対峙しながら、それを癒していく過程を描いたとも言っていたので、それも象徴されていたんだと思う。

つまり、偶然にもアルバムのテーマと今の状況があってしまったということ。ロックダウンを潜り抜け、ライブは行えるようになった現在を、苦痛を体験した後の癒し=祝祭のダンスパーティーという形で見事に昇華していたと思う。

●オープニングは過去の強烈なヒット曲連発。
まず、この過酷な時代とそれを克服して最大限楽しむんだという意志が表現されていたのは、最初の3曲。いきなり”Bad Romance”, “Just Dance”, “Poker Face”の強烈に破壊力のある曲から始まり大盛り上がり。

今回のライブは、「前章」「アクト1」〜「アクト4」、「ファイナル」と章が分かれていて、そこでトラウマから、自由を得て、癒しの過程が描かれている。ガガもインスタで、
「音楽、ダンス、ファッション、アート、テクノロジーを通して、自由と喜びのビジョンを表現しようとした」とコメントしていた。

●衣装はダークでエッジあり。
ブルータリズムに合わせて、衣装もこれまで以上に、ダークでエッジがあった。ラテックスからレザーなどハードな素材を使ったものが多く、SFチックでアバンギャルドのガガ復活だった。

最初に流れたニック・ナイトによる映像は、偶然だが、彼女が抜擢されたばかりの『ジョーカー2』を彷彿とさせるようなものだった。

”Bad Romance”では、Gareth Pughのドレスを着ながらも、身動きができないでいた。

かと思えば、”Replay”ではVex Latexに身を包み、フェイクの血を流していたりもした。

さらに”Stupid Love”ではAlexander McQueenのレザージャケット。

”Babylon”ではゴールドのスーツ。

ゴージャスだが、エッジがあって常に戦闘モードでもある。

ニック・ナイトの撮影したインタールードでは、Chrisian Lacroixのドレスも着ていて周りの人達がうっとりため息を付いていた。

ちなみに、衣装で圧巻だったのは、XTIAN de MEDICIによる昆虫みたいなヘッドピースを付けてピアノで熱唱。

●第2ステージのピアノでのエモーショナルな熱唱。
ガガは、もちろん強烈なダンスソングも連発するのだけど、第2ステージに移動してピアノによるパフォーマンスも最高だった。トニー・ベネットとの共演やラスベガスでのレジデンシーのショーも思い出す。オスカー候補作にも出演する映画での活躍も思い出させ、彼女のアーティストとしての才能ばかりかその幅広さも実感する場面だ。

第2ステージでは、いきなり映画からの大ヒット曲”Shallow”を披露したし、続いて、「特別な友達」トニー・ベネットに捧げる曲も披露。その前に、「トニーとはNYで近所に住んでいた。トニーはいつも私にどんどん前に進めと励ましてくれた人。今事情は変わってしまったけど(トニーの病気により)、彼の奥さんのスーザンが彼と毎日一緒にいてくれているから嬉しい。彼は今日はここには来れないけど、でも、私達をいつでもこんな風に覚えていたい」と言って、”Always Remember Us This Way”を感動的に演奏した。またここで、彼女の作ったチャリティ団体、Born This Wayファンデーションがメンタルヘルスを支援する活動をしていることを誇りに思うとも語っていた。とりわけこの2年を経て、「世界をより勇気のある、より優しい場所にしたいから」と。

さらに、”Edge of Glory”の前には、会場となったニュージャージーと言えばの、ブルース・スプリングスティーンとEストリート・バンドについて触れた。とりわけ、この曲に、亡くなったクラレンス・クレモンズが参加しているので、このビデオがリリースされた日に彼が亡くなったことも語られた。

また”1000 Doves”はピアノのデモバージョンで披露されたのが特別だった。そこで「この曲は、悲しい、悲しい曲で、私のすごく辛い時期にインスパイアされて作った曲。もともとはピアノで書かれたもので、それを最終的にはダンスソングに変えた。だけど今日は作ったままを披露する」とパフォーマンス。

そこで、「ニュージャージーでは、良い思い出もたくさんあるけど、辛い思い出もたくさんある。でも今日は良い思い出の方を思い出したい」とも語り、つまり、それが完成形の”1000 Doves”でもあり、悲しみから喜びを掴む、このライブ全体をも象徴していたと思う。

ガガがガガらしくて、最高だったのは、そんな数々の思い出と感動的なパフォーマンスを披露しているのに、その間中ピアノは、倒れた木のようでもあり怪獣のようでもあり、ガガは昆虫みたいであるということ。その奇妙さ、居心地の悪さも正にガガっぽかった。

●ファイナル。
そこからメインステージに戻り、「ファイナル」で、”Stuipd Love”と”Rain on Me”を披露。始まりと同じように強烈だが、過去のヒット曲に始まったこのライブが、最新のヒット曲で、しかも、希望があり開放感があり力強く締め括られたのが、この日のテーマにもあっている。

セットリストは、最新作の『クロマティカ』に、『ザ・フェイム』、『ザ・モンスター』、『ボーン・ディス・ウェイ』をより中心にした内容で、ガガをガガたらしめたポップな曲が集結していた。

ここでライブを終えることもできたと思うけど、今世界的に大ヒットしているトム・クルーズ主演『トップガン マーヴェリック』のテーマソング”Hold My Hand"までやってくれたのが、さすが出し惜しみなしのガガらしいサービス精神。しかし、その「私の手を握って」と歌った時の手が、ジャケ写でも使われていたGray Fay Creationsによる人工の手で、その温もりとは逆の痛さ、苦痛が表現されているのも完璧だった。

ちなみに、このライブだけでも大仕事なのに、その最中に、自分がプロデュースしているリップがいかに輝いて、しかも落ちないのかまでインスタ。何から何まで最大限で努力していて偉すぎる。

涙あり、血もあり、死もあり、しかしそこからほとんど命がけで、来たファンを踊らせ、喜びで満たしてくれるガガのライブ。日本の皆さんも8年ぶりのガガのライブ。思う存分楽しんで!

以下この日のセットリスト。
Prelude
Bad Romance
Just Dance
Poker Face

Act1
Alice
Replay
Monster

Act2
911
Sour Candy
Telephone
LoveGame

Act3
Babylon
Free Woman
Born This Way

Act4
Shallow
Always Remember Us This Way
The Edge of Glory
1000 Doves
Fun Tonight
Enigma

Finale
Stupid Love
Rain on Me

Encore
Hold My Hand



ロッキング・オン最新号(2022年9月号)のご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。

8年ぶりの来日間近!  喜びと感動の大ダンスパーティー、レディー・ガガの最新ライブレポート。
中村明美の「ニューヨーク通信」の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする