ビヨンセが現在行っている『ルネッサンス』ワールドツアーは、文句なしに今年のメインストリーム最高峰と言える内容だ。9月4日はビヨンセの誕生日だったのだが、LAでライブが行われ、なんとサプライズでケンドリック・ラマーとダイアナ・ロスが登場した。しかもダイアナ・ロスが音頭をとってスタジアムの約6万人が「ハッピー・バースデイ」を歌うという非常にアイコニックなものになった。
各メディアも興奮して画像、映像をポストしている。
また通常のライブでは、”Love Hangover”がインタールードで流れるのだけど、今回は、それを本人がいきなり登場して歌ったので大盛り上がりしたのだ。
それを見たビヨンセが、ダイアナ・ロスに向かって思い切り走って来る場面も素敵すぎだ。今回のビヨンセのツアーは完璧にダンスの振り付けがされていて、ビヨンセもそれを毎回超人のようにこなしているので、ここではビヨンセの思い切り素の姿を見せているのが、超貴重。何より感動的だ。
さらに、セットの終わりの方で、”America Has A Problem”がパフォーマンスされるのだけど、この日は、なんとケンドリック・ラマーが登場し、初めてライブでこの曲を共演した。ケンドリックも今キャリア最高というパフォーマンスをしている最中なので、歴史的瞬間と言えると思う。
このツアーは、基本的には前座もないし、各地でゲストが参加するということがこれまでほとんどない。このライブはビヨンセの誕生日だからの特別な内容となった。
『ルネッサンス』ワールドツアーについては、ロッキング・オン9月号のNY通信のページでも紹介させてもらったけど、どのメディアも絶賛状態。彼女のキャリアにおいても、最高峰だし、ツアー史上最高とすら言えるくらい。テイラー・スウィフトの『The Eras』ツアーも同様に彼女のキャリア最高にして、別の意味でツアー史上最高。比べる必要もない。2人とも共通しているのは、実際にこれまで誰もやったことがないような、メインストリームでも頂点を目指したライブをしているということだ。そのために全てを出し尽くしている。
結果、アメリカの経済紙などはこれまでツアーとして史上最高記録だったエルトン・ジョンのツアーを2人ともが抜く可能性が大と分析している。
実際、ビヨンセは7月に、1ヶ月の興行成績としては、史上最高を記録。
ビルボード誌によると
ビヨンセの7月1ヶ月の興行成績は、1億2760万ドルで、
ザ・ウィークエンド 8570万ドル
コールドプレイ8380万ドル
つまり、桁違いで抜いている。
また女性アーティストとしては、これまでマドンナが2008年〜2009年に行った『Sticky & Sweet Tour』が史上最高の興行成績を記録しているけど、ビヨンセはこれをすでに抜いたという報道もチラホラ見られる。ただし、まだメジャーなメディアがしっかり報道していないので、これについてはもう少し待ちたい。どちらにしても、女性アーティストという括りではなくて、歴代1位になると予想されているくらいだから、時間の問題なのだと思う。
面白いのは、ビヨンセも、テイラーも、それぞれのツアーがあらゆる意味で前代未聞の素晴らしさなため、ファンの間では、このツアーが最後でもう今後スタジアムツアーは行わないのでは?という噂にすらなっているということ。
私は、幸運にも、アメリカツアーの初日であるフィラデルフィアで7月12日に観て、ニュージャージーでも7月30日に観ることができたのだ。それからもう1ヶ月以上経つのに見所がありすぎて、いまだ興奮覚めやらぬ状態だ。”SFディスコ”とよく形容されるこのライブは、本当に観客を未知の場所に連れいて行ってくれ、女性エンパワーメントでもあり、黒人のカルチャーと歴史、LGBTQコミュニティ、ダンスカルチャーの歴史、女性アーティストの歴史へ敬意を評するものであり、非常に意味深いものでありながらも、とにかく圧倒的で、思い切り楽しませてくれる内容なのだ。だからファンがそれぞれ衣装を着てやってくるのだけど、それも自分たちもこのコミュニティの一員なのだ、という自己表示であり、パーティを楽しむという意思表示でもある。
約3時間20分で、キャリア全10作品からパフォーマンスするテイラーもすごいけど、ビヨンセも、34曲約3時間。まずビヨンセのスタミナがすごいし、しかも、7場面に分かれていて、映像から、衣装から、ダンスから、何よりビヨンセのボーカルもキャリア最高。
また、使われるテクノロジーも、アーティスティックなクオリティも、各分野の人達が最高の才能をビヨンセのために発揮して結集させて作り上げた、というコンサートの総合芸術。それを引っ張るビヨンセが明らかに誰よりも努力もしているのが分かる。何もかもが破格。
娘さんのブルー・アイビーが登場する場面もあって彼女も最高。
まだ11歳のあどけなさを見せるところと、父譲りの肝が座ったかっこ良さも見せる。また、母譲りで子供の頃からエンターテインとは何なのかもう心得ている。これはテイラーにも言えることだけど、7万人も収容するスタジアムなのに、チケットを取るのは不可能に近く、買った人たちがどんな苦労してここに来ているのかもビヨンセは承知。だけど始まった瞬間に観客は即、ここまで来た甲斐があったと思えるような内容になっている。これを超えるライブって当分観られないような気がする。ビヨンセが、『アクト2』としてさらにすごい内容を用意していない限りは。でも普通に考えて不可能だと思う。
テイラーは無事に来日が決定したので、どうかビヨンセも決定しますように(祈)。
それまでツアーのセットリストがプレイリストで聴けるようになっている。
https://smji.lnk.to/BeyonceRenaissanceWTP
LAのセットリストは以下の通り。
https://www.setlist.fm/widget?setlist=63a29a87
思えば、アメリカに関して言えば、今年は、テイラー・スウィフトに、ビヨンセがメインストリームで最高に評価が高く成功したツアーを行っている。また、ロックで言えば個人的にもボーイジーニアスのライブが最高の盛り上がりだったと思うし、これから発売のオリヴィア・ロドリゴのアルバムもロックだというし。さらに映画においては『バービー』がビヨンセ、テイラーと同様に、史上最高という興行成績を記録している。女性、クィアアーティスト達がシーンも経済も引っ張った年になっていると今のところ言えるような気がするのだ。もっとしっかりと評価して欲しい。
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