マイケミ新作を語る@AP
2009.12.02 18:51
巷では2009年の総括が行われている今日この頃。オルタナティヴ・プレスは、すでに2010年特集!来年期待される新作特集をしながら、その中でも最大の注目作となるだろうマイ・ケミカル・ロマンスを表紙に。新作完成までのいきさつを追ったかなり興味深い記事になっている。あ、てか、表紙は6パターンもあるぜ!店頭ではメンバーひとりひとりが表紙の1冊ずつがあり、定期購読している人には、バンド全員の集合写真が表紙のものが送られるらしい。1冊4.99ドル。ファンは全部買うんだろうなあ。私がスタンドに行ったらすでに1冊しかなくて、フランクが表紙でした。
内容的には、とにかく『ザ・ブラック・パレード』のツアーがかなり過酷で、実際病気になってしまったメンバーもいたし、バンドをやっていることが楽しく思えなくなってしまい、自分達が本当に『ザ・ブラック・パレード』になっていた。と、それで、これで終わりなんじゃないかというところまで一旦来たところで、しかし、『ウォッチメン』のサントラをやったことで、バンドが回復。それを突破口に新作作りが始まった。ブレンダン・オブライエンをプロデューサーに、LAでレコーディングをした。というところまでは、すでに皆さんご存知の通りだと思いますが。面白かったのは、それを作っている途中に、日本のサマソニに出たことで、自分達の曲の方向性が間違ってやしないか、と気付いたのだということ。自分達らしさを失っていると気付いたのだと。
「東京から大阪に新幹線で移動している時に、これまでレコーディングした曲を聴いていたんだ。ジェラルドは、僕らの曲がアルバムにふさわしい強い曲ではないんじゃないかと思っていた。それで、(日本などで)ライブを何回かやったことで、古い曲にいかにキッズがのめり込むのかを観て(すべてが変わった)。もしそのままの曲を書いていたら、自分達の強さを見失っていたと思う。それまでは、自分達ではそれはすでに最高地点まで達してしまったから、”それ”以外に一体何ができるのかを捜していた感じだったんだ」「だけど(それをきっかけに)自分達の何が最強なのかということに立ち返れた。バンドのルーツに帰ったんだ。でも、さらによりよいものになってる」と、レイ・トロが語っている。
日本にいる間にジェラルドは、新しいノートを買って最初のページにこう書いたそうだ。「START AGAIN」と。「ノートを、新しいヴォーカルや曲や歌詞のアイディアで埋め尽くした」「だから21曲もレコーディングすることになったんだ。つまり、それまでにレコーディングした曲が良くなくて、アルバムに収録するべきではないと思ったからではなくて、他に何か足りないものがあると思ったからなんだ。それで、あと40曲は書けそうだっていうひらめきがあったんだ」とジェラルド。「このアルバムは『ザ・ブラック・パレード』への返答なんだ」「このアルバムで一番リスナーに言いたいことは、自分が誰なのかということを世界に定義させるなということ」「もし僕に万が一のことがあった時に、僕の娘には、僕が世の中の人たちが仕立て上げた人間以上の人間だったと思ってもらいたいんだ。彼女の父親が犠牲者だったとは思って欲しくないし、彼女自身もそうだったとは思って欲しくない」「”マイケミに命が救われた”というのは、間違った概念だ。僕らの音楽から何か得るものがあったのだとしたらそれは本当にありがたいし感動的だけれども、でも究極的にはその現実をくぐり抜けたのは”君”自身なのだから。僕は、それを世界に伝えたいんだ」と。
日本に行った時ワーナーのオフィスに行き、そこで幹部を前に担当ディレクターに「エモは死んだ。そして唯一の生き残りがマイ・ケミカル・ロマンスです!」と紹介されたことなども書かれている。
そしてアルバムが一旦発売されたら、このアルバムがどういう作品なのかを語るのではなくて、とにかくぶっ飛びなライブをやりたいのだということだ。
以下ジェラルドによる曲の解説:
”Death before disco"
日本に行く前に書かれた曲。「”反パーティ・パーティ・ソング”」なのだそう。
ストゥージズ、MC5などデトロイト・パンクに影響された曲。実際MC5のギタリスト、ウェイン・クレイマーの前で披露したのだそう。
”The Light behind your eyes"
後期ピンク・フロイド『対』的サウンド。「シネマティックなものにしようとした。銃撃戦の始まる前の夕日のような感じ」。
"Hail to the king"
My Chemical Zeppelin?のような曲。
「とにかく曲の意味なんて関係にない。ロック・ショーをやってやるんだ、というタイプの曲」
”Still alive"
レディングでボトルを投げられた事件を元に、ボトルを投げた方の視点で書かれた曲。
”Trans Am"
"Badlands"(犯罪ドラマ)と『ブレードランナー』に影響されたような曲。
「暴力と自動車というのは、アメリカの神話の重要な部分を占めている」
"Save yourself, I'll hold them back"
「ジューダス・プリーストの”Living After Midnight"にボン・ジョヴィと『スウィート・リベンジ』が混じったような曲。レーザー・メタルな曲にしたかった。犠牲者になるのではなくて、いかに信じる者になることが大事なのかということについて」
”The only hope for me is you"
"Famous Last Words" のいとこのような曲。
「"Famous last words"はすごくダイレクトなサビの曲だったと思うけど、この曲はさらにダイレクトなんだ。これは僕にとっては、人生の始まりを見つめている曲。それは、9月11日のことなんだけど。それからこれは多くのことについての曲であり、例えば、子供をこの世の中にもたらすこと。そして、子供が酷い目にあわなくてはいけないんじゃないかと心配すること」
”Black Dragon Fighting Society"
「僕の一番好きな曲。ビースティ・ボーイズの『イル・コミュニケーション』の”Heart Attack Man"を彷彿とさせる曲。2時間分くらいのプロダクションがありながら、マイケミらしいサウンドのする曲」