THE NOVEMBERS『今日も生きたね』:この醜く美しい世界で
2014.05.12 23:07
5月14日に発売されるニューシングル『今日も生きたね』。
なんと現在オフィシャルサイトで表題曲が24時間限定でフリーダウンロードできる。聴いてほしい。
http://the-novembers.com/
小林祐介は「アンセム」というテーマのもとこの曲を書いたという。アンセムとは聖歌、賛美歌、祝歌という意味だ。ではTHE
NOVEMBERSはこの曲で何を祝し、賛美しているのか。いうまでもない。タイトルにもあるとおり、そこにある生、そして巡っていく生命だ。ただしそれは「命は尊い」とか「生きていることは素晴らしい」ということではない。むしろ逆である。
育っていく生命にも、失われていく生命にも、奪われていく生命にも、汚れた善意にも清々しい悪意にも、ヒトが作ったものにもヒトが壊したものにも。この曲はそのすべてに同じように穏やかな視線を注ぎ、すべてを肯定する。すべてを「それだけのこと」と優しく突き放す。そのそぶりは、柔らかで温かいぶんだけ残酷だ。これは優しくて残酷な歌だ。
だがその残酷で透徹した視点こそが、この世界を受け入れ、そこに美しい何かを見出すための唯一誠実な態度なのだとしたらどうだろう。残酷さや醜さを受け入れた先にしか本当の美しさなどないとして、その美しさを知ってしまったなら、アーティストは手を伸ばすしかないのだ。2曲目に収録された、活動初期からの楽曲“ブルックリン最終出口”で「失われたもの」として歌われた「清らかな心」を否定するところから、新しい世界が始まる。これはそのためのアンセム――来るべき新しい世界に鳴り響く「国歌」なのかもしれない。