パティ・スミスとフィリップ・グラスの「ギンズバーグへのオマージュ」素晴らしかった!!

パティ・スミスとフィリップ・グラスの「ギンズバーグへのオマージュ」素晴らしかった!!
「アレン・ギンズバーグの生誕90歳を祝うことができて嬉しい。フィリップ・グラスはもうすぐ80歳、私は70歳――まだ赤ちゃんみたいなものね」とパティは、巨大なスクリーンに映されたギンズバーグの写真の前でそう言って、会場を笑わせた。

すみだトリフォニーホールで行われた『THE POET SPEAKS ギンズバーグへのオマージュ』を観た。
身も心も洗われるものすごいステージで、とても大きな力をもらった。

昔、詩人と預言者は同じような意味を持つ存在だったが、その理由がなんだかわかるような気がした。
詩人の言葉は、いつも「未来」に向かっているからだ。

70歳、80歳と言えば老人と言われる年齢だが、彼らの歌や言葉はまっすぐ未来に向かっている。それは必然的に、子供や次の世代へとつながっていく。
自分の力が何かにつながり、糧になっていると感じられる時、人間は不元気になれる。

チベットのテンジン・チョーギャルの心に深く染みいる歌(ピアノはパティ・スミスの娘ジェシー)のあと、パティ・スミスとフィリップ・グラスが登場。スクリーンには村上春樹と柴田元幸による翻訳が映し出される――日本語の詩をしっかり目で追いつつも、パティが身ぶり手ぶりを交え、時にはステージに唾を吐きながらの勇ましい朗読も見逃せないし、フィリップ・グラスのピアノを弾く姿も神々しいし……どこを見ていいか困るほど贅沢なステージだ。

途中、パティの盟友レニー・ケイがアコースティック・ギターで参加し、娘ジェシーとともに3人で楽曲を披露。特に“Wing”(途中間違えてやり直す様子と、「歌っていて鳥になって頭が自由に飛んで行っちゃった」みたいな言い訳がかわいかった)、オバマの広島訪問を話題にしつつ反核へのメッセージを伝える“Pissing in a River”は素晴らしかった。

フィリップ・グラスの独奏による、ギンズバーグへのオマージュも感動的!

そして最後の朗読は、Holy! Holy! Holy! Holy!(聖なるかな!)で有名な『HOWL』の詩、パティは〝spell〟という楽曲としてかつてカヴァーしていたが、生で、しかもフィリップ・グラスの演奏で聴く、この祝福の詩はすごすぎて震えた。
アンコールでは出演者が全員参加しての〝ピープル・ハブ・ザ・パワー〟(フィリップ・グラスも立って手拍子をを!)、パティはステージの客席ぎりぎりまで歩み寄り、みんなの声を求め、ひとりひとりに歌いかけた。

例えば、ギンズバーグが、ポール・マッカートニーのギターにのってポエトリー・リーディングする様子などは今映像を見てもすごくポップだが、
今回の朗読は、ギンズバーグの心を裸のまま表現しているように感じた。
これこそが、彼と深い交流を持っていたフィリップ・グラスとパティ・スミスなりのオマージュなのだろう。

最後の辺りにスクリーンに映されたギンズバーグの裸の写真がすべてを物語っていた。
(井上貴子)
rockin'on 編集部日記の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする