スネイル・メイルの第2章が始まる ―― 渾身の2nd 『バレンタイン』は彼女のメルクマールとなるか? 神童SSWから、USインディの最前線へ

スネイル・メイルの第2章が始まる ―― 渾身の2nd 『バレンタイン』は彼女のメルクマールとなるか?  神童SSWから、USインディの最前線へ - rockin'on 2021年11月号 中面rockin'on 2021年11月号 中面

クライロやサッカー・マミーらと共に、昨今の存在感を増す若手女性シンガー・ソングライターたちの中のひとり、スネイル・メイルことリンジー・ジョーダン。その瑞々しくて繊細な歌と音楽で大きな共感を得たデビュー作『ラッシュ』から3年。待望の2作目『バレンタイン』が完成した。この間、特にパンデミック以降は動静が途絶えていた彼女が何を思い、そしてその日々がどれほど実り多きものだったかを伝える、まさに渾身の作品だ。

先行公開された“バレンタイン”は、彼女の音楽が大きな飛躍を遂げたことを象徴する1曲だ。前作を特徴付けていた弾き語りやギター・ロック・ナンバーに加えて、今作ではシンセやサンプルが多用されるなど音色やテクスチャーの凝ったソングライティングとアレンジを聴くことができる。

バウンシーなビートに乗せた“ベン・フランクリン”や、フリー・ソウル~AORのムードもたたえた“フォーエバー(セイリング)”。ギター・オリエンテッドな“オートメイト”においてもサイケデリックな電子音が施され、“ミア”ではピアノやストリングスの装飾が繊細なフォーク・ソングをウェルメイドに仕立てている。

多彩なバンド・アンサンブル、そして共同プロデューサーのブラッド・クック(ボン・イヴェール、ワクサハッチー)の手も借りて洗練されスケール感を増したレイヤーのある音作りが印象的だ。ロマンスや失恋、怒りや落胆に翻弄される感情の起伏を率直な言葉で歌い上げるジョーダン。低音に厚みを蓄えた歌声の成熟した表現力に驚かされるが、この聴き手を激しく揺さぶる『バレンタイン』が生まれた背景には、前作の後、若くして名声と成功を得たことで生じた問題に対処するために更生施設に滞在したことが明かされる(“ベン・フランクリン”)。

「私がこれまで経験した中で最も深いレベルのカタルシスとセラピーと呼ぶことすら、すごく控えめな表現になる」。そう語るジョーダンにとって『バレンタイン』は、振り返ったときこの先のキャリアを定義するメルクマールとなるのではないだろうか。次号では彼女のインタビューをお届けしたい。 (天井潤之介)



スネイル・メイルの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

スネイル・メイルの第2章が始まる ―― 渾身の2nd 『バレンタイン』は彼女のメルクマールとなるか?  神童SSWから、USインディの最前線へ - rockin'on 2021年11月号 右:表紙/左:表2rockin'on 2021年11月号 右:表紙/左:表2

rockin'on 編集部日記の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする