「私たちは、みんなグレー・ゾーンに生きていて、
良いとか悪いだけでは語れないし、
みんな自分なりに最善を尽くそうとしているんだと思えた。
それがこのアルバムで描いた旅路」
「半永久的に、これが私の最後のライブ」と言い激震を走らせたミツキが無事帰還。3年半ぶりの驚異的な新作『ローレル・ヘル』と共に戻ってきた。
前作『ビー・ザ・カウボーイ』は、ピッチフォークが18年の年間ベスト・アルバム1位に選ぶなど世界的にも絶賛され、彼女が一躍インディ界のスーパースターとなった作品だったが、その後彼女は音楽はやめようと思うくらい燃え尽きていた。
今作ではそこから彼女が人間として再生し、音楽を作り始め、また彼女個人の世界が終わりを迎えたところから、いかに光の見える場所に辿り着けたのかという壮絶な物語が描かれている。しかも世界はパンデミックに陥っているという劇的な状況から生まれた作品だ。
しかし仰天するのは、サウンドはそれとある意味反比例するように、過剰に弾けた80年代的ポップだったり、3分間の中で、時にエレクトロから、アメリカーナと目まぐるしく変貌したり、昇天し続けたりするのに、破綻しないばかりか、ミツキらしい批評眼や違和感があり、彼女独自のポップ言語に昇華された様な見事な曲になっている点だ。捨て曲なしで彼女の成長を刻む、間違いなくキャリア最高作が完成した。(中村明美)
ミツキの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。