カニエ・ウェスト&タイ・ダラー・サインの『VULTURES 1』は、傑作なのか? 失敗作なのか? 徹底検証クロスレビュー

カニエ・ウェスト&タイ・ダラー・サインの『VULTURES 1』は、傑作なのか?  失敗作なのか?  徹底検証クロスレビュー - rockin'on 2024年5月号 中面rockin'on 2024年5月号 中面

現在発売中のロッキング・オン5月号では、カニエ・ウェストの新作『VULTURES 1』の徹底検証クロスレビューを掲載しています。本原稿の一部をご紹介。


ユニークな音と、欠落したエスセティック

文=つやちゃん

誰と会ってカニエ・ウェスト&タイ・ダラー・サイン『VULTURES 1』の話をしても、皆揃って歯切れが悪い。本作について、誰も語る言葉を持ち合わせていないようだ。サウンド自体は気持ち良くて面白いのでついつい聴いてしまうのだが、その度にどこかそわそわした気持ちになる。

馬鹿馬鹿しいアートワークを眺めていると、すぐさま嫌な思い出が想起される。小学校の時にクラスにいた、芸達者で頭の回転が速くてハッタリが利いていて、何もかも強引に笑いに変えてしまうような男の子。好きな子や苦手な人に意地悪なことをして、でもすべて寂しさの裏返しだから、なんだか見ていて切なくなってくる男の子。カニエを聴いていると、いつもそんなことを思い出して胸が締めつけられ、苦しくなってしまう。つまりは、どこまでもマッチョイズムに縛られた作品なのだろう。(以下、本誌記事へ続く)


ようやく洞窟を抜けたカニエ・ウェスト

文=高見展

カニエ・ウェストとタイ・ダラー・サインによる新ユニット、¥$による新作。カニエの活動については、16年の『The Life Of Pablo』を引っ提げたセイント・パブロ・ツアーを緊急入院のため急遽中止して以降、正直いってかつてのカニエの輝きや閃きを感じられなくなっていたといってもいい。もちろん、19年の『ジーザス・イズ・キング』、あるいは21年の『ドンダ』などはカニエでしかありえない力業となっていたし、カニエの底力をみせつける作品となっていて、やはりすごいと唸らされる内容にはなっていた。しかし、カニエ本来の閃きや楽曲の展開のどこまでも自在で過激な変化など、そうした魅力については物足りなさをどうしても感じざるをえなかった。

しかし、今回の『VULTURES 1』は、本来の奔放な作風が蘇っているという意味で、カニエの芸風が復活したと素直に嬉しく思った作品だ。(以下、本誌記事へ続く)


いまのイェをどう受け止めていいのかわからない

文=池城美菜子

《クレイジー 反ユダヤ主義 双極性障害 それでも俺はキング》。いい意味でも悪い意味でも、毎回驚かせる男、イェこと元カニエ・ウェスト。今回は、筆者としては前代未聞の「リリックがよくわからないほうが、よっぽど楽しめるアルバム」を作ってきた。率直に言って、心穏やかに本作を聴けるのは非英語圏の人かもしれない。サウンドは、ソリッドだ。11年前の『イーザス』寄りの曲が多く、“バウンド 2”によく似た“Problematic”もある。インディペンデントになったが、大勢の同業者を集めてマキシマリズムを追求する方針はあいかわらず。制作陣はティンバランドやスウィズ・ビーツ、88-Keysといったこれまでも組んだ仲間や、SNSで会ったことを報告しただけで炎上したJPEG Mafiaまで参加している。

もちろん、本作の一番の功労者はユニット名¥$の片割れ、プロデューサーでもあるタイ・ダラー・サインだろう。いまのイェと組むのは、火中の栗を拾いに行くどころか名前を出した途端、焼き栗になる覚悟が必要だ。(以下、本誌記事へ続く)



カニエ・ウェストの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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