フォンテインズD.C.のニューアルバム『Romance』が、2024年下半期の最重要ロックアルバムの一作となるのはほぼ間違いないだろう。フォンテインズD.C.は過去3作にわたって常に「自分たちにとっての普遍性」と「オルタナティブロックとしての同時代性」を追い求めてきた凄いバンドだが、本作はその2つをさらに高次元で融合させた傑作となることを、2曲の先行シングルが予告していたからだ。
何しろ、第1弾の“Starburster”からして度肝を抜かれるシロモノだった。ヒップホップやダブの影響を多分に含んだトリッピーなダンスロックであり、サイケデリックの最深部に到達するエレクトロニカでもある同曲に伴って、バンドはビジュアル面でもイメージを大胆に刷新。大友克洋の『AKIRA』に影響を受けたというカラフルでサイバーパンクな彼らの新モードは絶賛され、米ローリング・ストーン誌他複数のメディアで上半期ベストシングルに選出されるに至った。
しかし、ピークはそこではなかった。本作への期待が確信へと変わったのは、第2弾の“Favorite”で、彼らが“Starburster”とは真逆のリリカルポップを放った瞬間ではなかったか。シンプルな曲/メロディの良さで勝負した同曲は、メンバーの子供時代のホームビデオがコラージュされたMVまで含め、フォンテインズD.C.の本質にリーチしたナンバーであり、新作のテーマである「ロマンスの在処」を指し示すものでもあったからだ。
つまり、彼らは“Starburster”と“Favorite”によって前述の普遍性と同時代性の両極を未だかつてなく押し広げ、決定的な一作となる本作をドロップするに相応しい場所を用意したと言える。「ダブリンの怒れる若者たち」として登場し、デビューからわずか5年で世界から信頼を集める新世代オルタナティブの旗手となったフォンテインズD.C.は、本作を契機にさらなる高みへと昇っていくことになるだろう。
本誌が出る頃には、彼らのフジロックのステージにノックアウトされた人も続出しているはずだし、本誌は来日インタビューを無事ゲットしているはず。次号をお楽しみに! (粉川しの)
フォンテインズD.C.の記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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