【コラム】今、なぜ再びU2の存在感がますます大きくなっているのか?

【コラム】今、なぜ再びU2の存在感がますます大きくなっているのか?
今の最新の音楽シーンを見ていて、U2の存在感がますます大きくなって来ているのを感じる。
ロックというジャンルに限って言えば、ビートルズ革命以降でロックに最も大きな本質的な変革もたらしたのはパンクでもグランジでもオルタナでもなく実はU2だったということが、ポップ・シーン全体の中で明確に証明されていっているように思う。
 
U2のあの循環するギターのアルペジオ的なリフは、ロック(パンクもグランジも含む)のリフの「ストップ&ゴー」「アップ&ダウン」の快感原則とは異なる高揚感をロックにもたらした。
その高揚感のあり方は、「ダンス」と「シンガロングできるアンセム」が必須となっている今のポップ・ミュージックの原型である。
EDMの快感原則ともリンクする。
だからULTRAでもEDCでもU2のサンプリングが頻繁に使われていたし、カニエ、ケンドリック・ラマーを始めとして最新のヒップホップ・シーンとのコラボが増えているのも必然だと思う。

 
そしてメロディーもそうだ。
ビートルズを基本とするロック/ポップスのメロディーに宿る「心」と、U2のメロディーに宿る「魂」は本質的に違う。
センチメンタルというよりもエモーショナル、愛というより慈悲、怒りというより義憤、夢というより意志、というふうに、音楽に込められているロマンの種類に違いがある(だから「オーオー! オオオー!」的な大合唱はビートルズにもパンクにもグランジにも本質的に合わないが、U2の系譜には合う)。
 
60年代、70年代的な「ロック・ドリーム」とワンセットだったビートルズ系のメロ(乱暴だけどあえてこう呼ばせていただく)は今でも脈々とシーンの隅々にまで流れているが、U2が80年代初頭に高らかに放ったもう一つのロック・メロは、シーンの大動脈として今や完全に主役になっているのだ。(山崎洋一郎)


ロッキング・オン最新号 編集後記より
山崎洋一郎の「総編集長日記」の最新記事
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