日経ライブレポート「Mr.Children」

90年代から今日まで、常にJ-POPシーンの頂点に立ち最前線を走り続けてきたMr.Children。こういう書き方ができるアーティストは他にもいるが、彼らほど相応しいアーティストはいない。
そのMr.Childrenが3年ぶりにドーム&スタジアムツアーを行った。それは、日本の音楽シーンがコロナ禍での苦しい戦いをくぐり抜けて再び本格的に動き始めた希望の証のように思える。

このツアーはデビュー30周年を記念したもので、初期の曲から最新曲「永遠」や「生きろ」まで含めた、オールキャリアを見渡すセットリスト。もちろん“innocent world”や“Any”や“GIFT”など国民的大ヒット曲の数々も惜しみなく披露された。

ヴォーカルの桜井和寿もメンバーもライブが楽しくて仕方がないという表情で、無邪気と言ってもいいぐらいの躍動感にあふれていた。30年を締めくくるというというよりも、通過点としての30周年であり、むしろ長い間ライブができなかった時期を終えての新たなスタート、という印象を強く受けた。
実は、彼らがライブというものに対してここまで強い欲求や喜びを感じるようになったのは最近のことだ。このツアー直前のインタビューでも桜井は「かつてはライブをやんなくても、作品を出していればいいと思ってた」と語っている。
長きにわたって名作、メガヒット作を作り続けてきた彼らにとって、ライブとはそれらの作品のお披露目の場という意味合いが強かった。でも今の彼らのライブには、演者と観客が直接エネルギーや感情をやり取りするライブの肉体性がある。
そういう意味でもこのツアーはMr.Childrenの新しいスタート、と言える。
5月11日、東京ドーム。

(2022年6月22日 日本経済新聞夕刊掲載)
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