すでに6月に公開された“Solara”に続き、新たに“Silvery Sometimes (Ghosts)”がアルバムリリースに先駆けて先日公開されたばかりだが、スマッシング・パンプキンズの新体制でのニューアルバムは、11月16日にリリースされることが正式にアナウンスされた。
“Solara”の、ザクザクと突きつけられる「まさにスマパン！」なサウンドに心踊りながらも、どこかで「いや、まだ油断はならん」と思いつつ、その後、バンドの動向や北米ツアーでの様子が続々と耳に入ってくるにつけ、これは予想以上に「継続的な活動」を期待していいのではないかと思うようになってきた。そして、今回公開された“Silvery Sometimes (Ghosts)”、これ、めちゃめちゃよくないですか？ 粗い質感のギターサウンド、ジミーのシャープなドラム、ビリーが歌う胸キュンもののメロディ。思わず「これ！」と快哉を叫びたくなる楽曲。俄然、アルバムへの期待値が上がる。
ビリー・コーガン、ジェームス・イハ、ジミー・チェンバレンというオリジナルメンバー3人が、スマッシング・パンプキンズとして再集結し、今年7月から全米ツアーを行うことをアナウンスしたのが2月。これまでジミーは脱退〜再加入を繰り返してきたが、イハがスマパンに再びラインアップされるのは、2000年のバンド解散以来18年ぶりであり、この3人が揃っての北米ツアーは実に20年ぶりとなった。その北米ツアーは大きな成功を収め、10月にはロンドン、ボローニャでの公演、11月には再びシカゴでのライブも予定されている。
もちろん、もう1人のオリジナルメンバーであるダーシーとの確執を伝えるニュースには、少し寂しい気持ちもあるけれど、「スマパンの現在」がポジティブな状態であることは、生配信されたシアトル公演の映像などを観てもよくわかるし（イハがメンバー紹介をしていた！）、ニュージャージーで同じく8月に行った30周年記念のスペシャル公演の豪華ゲストとの共演など、ある意味屈託のない活動にも驚いた。さらに、MLBの試合、シカゴ・カブスのホームゲームで、ビリー、ジミー、イハ、そしてツアーメンバーのジャック・ベイツ（ピーター・フックの息子！）が揃って、始球式に登場したのも微笑ましいニュースだった（全員、背中に自分の名前がプリントされたユニフォームを着ていた）。いずれも予想以上のバンドの状態の良さをうかがわせる。
ともかく、なぜ今になって、この3人が揃うこととなったのか。2000年の解散以降は、活動を再開したバンドにイハは戻ることはなかったし、2009年にはジミーもバンドから二度目の脱退をした。その時のジミーのコメントは、「ビリーと敵対したわけでも、何か決定的な出来事があったからでもない」としつつ、スマパンの活動に情熱を注げなくなったというようなニュアンスが感じられた。その後はサポートを加えながらもバンドの活動は続くわけだが、2012年の『オセアニア〜海洋の彼方』での充実した制作、2014年『モニュメンツ・トゥ・アン・エレジー』での高評価を経て、スマッシング・パンプキンズは再び、獰猛で穏やかでオルタナティブなサウンドの体現者であることを知らしめた。
そんなビリーのバンド活動に対するエネルギーに呼応するように、ジミーもイハも、スマパンへの情熱が改めて湧き上がってきたのではないかと思う。また、イハとジミー不在のバンドにあっては、2007年から加入したジェフ・シュローダー（G）の存在は欠かすことのできないものだっただろう。だからこそ、今回のオリジナルメンバーの復帰にあたっても、イハとジェフの入れ替え、ということではなく、ジェフ在籍のままイハ加入という、現在進行形に進化した形態をとることになったのだ。そのプラスの発展形がライブパフォーマンスをよりアグレッシブなものにしているように感じる。イハとジェフの関係性、演奏のバランスもかなり良さそうだ。
というわけで、今のところ、このオリジナルメンバー3人が揃っての再始動については不安要素は何もなく、11月のアルバムリリースが待たれるばかりである。そしてできれば来日公演の実現にも期待したい。切に。（杉浦美恵）
新作『Shiny And Oh So Bright, Vol. 1 / LP: No Past. No Future. No Sun.』のトラックリストは以下。
1. Knights of Malta
2. Silvery Sometimes (Ghosts)
3. Travels
4. Solara
5. Alienation
6. Marchin' On
7. With Sympathy
8. Seek and You Shall Destroy
スマッシング・パンプキンズの公式サイトでは『Shiny And Oh So Bright, Vol. 1 / LP: No Past. No Future. No Sun.』のプレオーダーを受付けている。
