10月11日に、あの名ライブ盤『at武道館』の40周年記念ライブをZepp Tokyoで敢行するチープ・トリック。もともとは武道館でのライブとして4月に予定されていたのだが、ギターのリック・ニールセンの急病により順延になった次第。
そこで今回の来日前に実現したのが、その40年前の武道館でのライブ映像をPAを通して上映するという「絶響上映会」だ。映像そのものは1978年に日本のテレビで放送され、武道館30周年記念の際にリリースされたものだが、これほどの音質でもって一般上映されるのは世界初の試みなのだ。
実際に足を運んでみてどうだったかというと、百聞は一見にしかずとはまさにこのことか、という感想もありつつ、音も視覚も同時にすごいので「百聞は一見にしかず」もまた違うというものだ。とにかく、一度観たことがある映像でもこの環境で観て聴くとなると、まるで違った体験になるのだとわかったし、本当に40年前のあの伝説のライブの片鱗に触れたような気がしてとても感激した。
もともと『at武道館』はこのライブの実際のセットリストとはまるで違う曲順になっていて、それはごく限られた収録曲の中での最も効果的な構成を追求したからだ。だから、1998年に武道館公演の演目を完全に収録した『ザ・コンプリート・コンサート』がリリースされた時には、このバンド本来のエッジをしっかり打ち出した演目になっていたため、最初はなかなか馴染みにくいところもあった。それは78年の『at武道館』の曲目と構成があまりにも完璧なマジックを生み出すものにもなっていたからなのだ。しかし、『ザ・コンプリート・コンサート』を聴き込んでいくと、今度はまたこのライブに備わっていた本来のカタルシスがわかってきて、これもまたたまらない魅力となっていくのだ。
今回の映像は基本的に『ザ・コンプリート・コンサート』の抜粋となっていて、そのカタルシスを映像としてなぞりつつ、しかも、ライブ会場の音響という限りなくリアルな音で堪能できることになって、ファンとしてこれ以上に嬉しい映像体験はないといってもいい
くらいだった。
あとは、バンドがどんなライブを引っ提げてきてくれるのか。ロッキング・オンとのインタビュー(『rockin'on』2018年10月号に掲載)ではどういうセットをみんなが望んでいるのか、それが悩みどころだとリックはこぼしていて、できれば観客の希望を募ってそれで決めたいくらいだと語っている。まんべんなく選曲しても「20枚近くアルバムを出してるわけだから、1曲ずつ取り上げるだけでもう20曲になっちゃう」ともぼやいていて、さらに今年は確かに武道館公演と『at武道館』の40周年記念だが、実はバンドの最高傑作との評価も高いサード・アルバム『天国の罠』の40周年でもあるのだ、とも悩みを明かしていた。どういう結果になるのか、とても楽しみだ。(高見展)
10月11日(木)にZepp Tokyoにて開催されるチープ・トリックの来日公演の詳細は以下の記事より。
チープ・トリックのインタビュー記事は現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。
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