あまりに充実したヨ・ラ・テンゴの世界を全堪能、前半・後半で繰り広げられた来日ライブをレポート!

あまりに充実したヨ・ラ・テンゴの世界を全堪能、前半・後半で繰り広げられた来日ライブをレポート! - pic by Kazumichi Kokeipic by Kazumichi Kokei

約3年ぶりとなったヨ・ラ・テンゴの来日公演だが、今回は5年ぶりとなるオリジナル・アルバム『ゼアズ・ア・ライオット・ゴーイング・オン』を引っ提げてのもので、この新作をどう取り上げていくのかが気になるところ。実際、今回は新作から8曲が披露され、かなり果敢な取り組みとなったが、だからといって新作を前面に打ち出すというものにはならず、あくまでヨ・ラ・テンゴ全体の作品世界を堪能させられたところが素晴らしかった。

オープナーは最新作からの“You Are Here”で、単音のエレクトロニクス・サウンドを徐々に重ねながらバンド・アンサンブルも被せつつ、壮大な音像を積み上げていくという、いかにもヨ・ラ・テンゴ的なテーマ性が貫かれた重厚な曲だ。

曲の終わりとともにノイズの残響音の中で、さまざまな機材やパーカッションを担当したジェイムズ・マクニューは本来のベースに持ち替え、ドラムのジョージア・ハブリーはドラム・セットからキーボード類へ移りドラム・マシーンを操作し、新作からの“Forever”へと静かに途切れなく移行していく。古典的なR&B感を打ち出すベース・リフ、無国籍なリズムとギターのアレンジ、そしてモダン・ロック的なアイラ・カプランのつぶやきボーカルが展開され、その合間に繰り返される陽炎のようにゆらゆらしたドゥーワップ・コーラスがたまらなく美しい。この2曲の流れの表現の豊かさと繊細な情感は、この日の肝かとも思えるものだった。

その後、“Detouring America With Horns”など普段のレパートリーを交互に取り上げつつ、新作から“She May, She Might”、“Ashes”を披露、“Here You Are”で第1部が終了し、15分の休憩となった。

あまりに充実したヨ・ラ・テンゴの世界を全堪能、前半・後半で繰り広げられた来日ライブをレポート! - pic by Kazumichi Kokeipic by Kazumichi Kokei

第1部がヨ・ラ・テンゴの音像と抒情を紡ぎ出していく内容だったのに対して、それに続いた第2部では、最初は新作からの“Dream Dream Away”で前半の内容を引き継ぎつつ、“Before We Run”でよりポスト・パンク/インディー・ロックとしてのエッジと資質が打ち出されるものに。新作からの“For You Too”もまたインディー・ロックとしての詩情を伝える素晴らしいパフォーマンスとなり、終盤の“Drug Test”以降はオルタナティヴ・ロックとしての爆発力をたたみかけていく怒濤の展開で、実に頼もしかった。

アンコールは純粋にファン・サービスの時間で、この日は思いつくままに3曲を披露。ここは自分たちも楽しんでいるようで、2曲目のトッド・ラングレンの“I Saw the Light”という選曲センスがとても染み入るように心地よかった。(高見展)

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※レポートは10月10日のShibuya O-EAST公演のものですが、ライブ写真は同会場で行われた10月11日のものとなっています。
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