4年半ぶりとなるザ・ブラック・キーズのスペシャル・ライブをLAで目撃!全米の全世代をパワフルに魅了する彼らの底力を実感した

pic by Koury Angelo

6度のグラミー賞受賞歴を持つザ・ブラック・キーズが、4年半ぶりとなるライブをロサンゼルスのウィルターン・シアターで行った。新作の名をとった「“レッツ・ロック”・ツアー」開始直前の特別公演で、会場は彼らがツアーで完売にするアリーナの6分の1以下の収容人数の劇場だった。

これだけでも十分なニュースなのだが、本公演は別件でテレビ(CBSLA=CBS Los Angeles)のニュースで取り上げられることになった。高額の転売チケットを購入したファンが会場に入れず、劇場前が100人を超える人々で溢れ返ったのだ。CBSLAによると、チケットマスターは転売防止のためチケットに特殊バーコードをつけ、それを事前に説明した上で発売を行ったが、知らないファンはStubHub(オンライン・チケット販売を運営する米会社)でスクリーン・ショット画像の偽チケットを購入していた。後日、StubHubは100ドルのクレジットと合わせてチケットの全額払い戻しを発表している。

こんな事件が起きるほどの人気バンドだが、彼らの素朴でアメリカンなブルース・ロックがこれほどマスに広まった理由は、10代から20代の若者層にも響いたという部分が大きいと思う。ザ・ローリング・ストーンズレッド・ツェッペリンに精通する年配ロック・ファンが、60~70年代にラジオで流れていても何ら違和感がない彼らのロックに惹かれるのは理解できる。実際、クラシック・ロックが好きそうな男性が観客の半分以上を占めてはいる。だが、ザ・ブラック・キーズのロックを、まるでビンテージ服のようにクールなものとして捉えているように思われる、お洒落な女子(とその彼氏)の割合も高いのである。

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ギター2名、ベース1名のバンドを従えてステージに登場したダン・オーバックとパトリック・カーニーは、シンプルなグラフィック・アートを映し出すスクリーンをバックに、歌とギターとリズムが阿吽の呼吸で噛み合わさって発生するロックンロールを、ひと続きの旅のように披露してくれた。本編ラストの代表曲“Lonely Boy”では大合唱を巻き起こし、アンコールはニュー・アルバム『“レッツ・ロック”』からの“Lo/Hi”に続けて、2010年の『ブラザーズ』収録の“She's Long Gone”で締めくくられた。非常に心地よく、また興奮させられる90分だった。

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まるで60sバンドのような音を鳴らす彼らだが、2019年のメジャー・シーンにはザ・ブラック・キーズのようなバンドはいない。だからこそファンは、何年もこの日を待望していたのだ。「“レッツ・ロック”・ツアー」は、11月末まで行われる。ライブが身上のバンドなので、日本ツアーもぜひ実現して欲しいと思う。(鈴木美穂)

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