値段以上の超バリュー! 比類なき詩人フィル・ライノットの体温と血と汗が蘇るシン・リジィ超豪華ボックス『ロック・レジェンズ』開封記

値段以上の超バリュー! 比類なき詩人フィル・ライノットの体温と血と汗が蘇るシン・リジィ超豪華ボックス『ロック・レジェンズ』開封記

10月23日、『ロック・レジェンズ(スーパー・デラックス・エディション)』と題されたシン・リジィのボックス・セットがリリースされた。

このバンドの結成50周年を記念して制作された本作の軸になっているのは全99曲が収録された6枚のCDだが、そのうち実に83曲までが初CD化音源、74曲が今回初公開となるトラックで、お馴染みの楽曲の貴重なオルタネイト・バージョンや、レア・トラック、セッション音源、今回初公開となるライブ音源などが含まれている。

さらにTV用に収録されたライブ・パフォーマンスやBBCの制作によるドキュメンタリー映像が収められたDVD、過去のツアー・プログラムすべてが復刻され1冊にまとめられたハードカバー本、歴代メンバーや関係者、彼らのファンであることを自認するミュージシャンたちからの多数のコメントなどが盛り込まれたブックレット、フィル・ライノットの詩集のレプリカ、彼らの作品のアートワークを手掛けてきたジム・フィッツパトリックによる版画作品がプリントされた大判のカード4枚(日本の郵便はがきの2倍ほどのサイズ)に至るまでがひとつのボックスに収められている。

筆者の手元にも届いたので早速開封してみると、まずはボックス自体の重厚さに唸らされる。インスタントコーヒーの瓶なら4本くらいは入りそうなサイズで、ずっしりとした手応えがある。CDとDVDはすべて紙ジャケ仕様で、A4サイズのハードカバー本には18ミリほどの厚みがあり、日本公演時のプログラムの誌面や、時代を感じさせる広告、オープニング・アクトの紹介ページに至るまでが復刻されていることに驚かされる。また、フィッツパトリックのカードも、額装して飾りたくなるような素敵さだ。

値段以上の超バリュー! 比類なき詩人フィル・ライノットの体温と血と汗が蘇るシン・リジィ超豪華ボックス『ロック・レジェンズ』開封記

このボックス・セットは完全生産限定盤で、日本盤は厳密に言うと輸入国内盤仕様という体裁になっているが、英文ライナーノーツやブックレットに掲載されたコメント、詩集に寄せられた序文、収録曲の歌詞と日本語訳が網羅された日本ならではのブックレットが付いている他、日本盤のみSHM-CD仕様となっており、DVDには日本語字幕も付いている。16,000円+税というなかなかの価格ではあるが、この収録量と内容を考えれば、お買い得と言ってもいいくらいだろう。(https://www.universal-music.co.jp/thin-lizzy/products/uicy-79182/

筆者自身、正直に言うとまだ現時点ではDISC 1の『グレイテスト・ヒッツ』を聴き始めたばかりで、各ディスクに収められているレア・トラックの印象などについて言及することはできないのだが、この『グレイテスト・ヒッツ』に収録された全22曲の中にも、シングル・エディット、ラジオ・エディット、シングル用の別ミックスといった「あれ? ちょっと違うぞ?」と思わせるものがふんだんに盛り込まれている。この先、たっぷりと時間をかけながら、『アーリー・イヤーズ』と銘打たれた2枚目以降のディスクと付き合っていくことになるのだろう。

このボックス・セットの宣伝文句には、かのスラッシュから寄せられたコメントから抜粋された言葉が用いられている。「シン・リジィは同時代のバンドたちの中でもずば抜けて独創的だった。あれ以来、彼らみたいなバンドは現れちゃいない」というものだ。

実際、このバンドがいかに魅力的かであるかを語ろうとすると、さまざまな形容詞を並べたてた挙句、結果的にこの“独創的”という言葉に行き着くように思う。もちろん彼らだって“無”の状態から音楽を生み出したわけではない。が、なによりもまず“人間”が感じられ、個性のぶつかり合いがこのオリジナリティを成立させているのだということを改めて実感させられる。

ことにフィル・ライノット(1986年1月に他界)という比類なき詩人の体温が、血や汗の匂いが、人間としての背景が、その言葉と歌声を通じて感じられるのだ。そして困ったことに、聴いていると何故かウィスキーなど飲みたくなってしまう。ちなみに1枚目のディスクの幕開けを飾っているのも“ウィスキー・イン・ザ・ジャー”だったりするのだが。


ブックレットにコメントを寄せている著名人の中には、メタリカのジェイムズ・ヘットフィールドやデフ・レパードのジョー・エリオットなどばかりではなく、スマッシング・パンプキンズのビリー・コーガン、プライマル・スクリームのボビー・ギレスピー、テニス界の巨人というべきジョン・マッケンローまでもが含まれている。

このアイテムは、いわゆるマニアの探求心を満足させるのみならず、そうしたさまざまな人たちを惹きつけてきたシン・リジィの魅力を、改めて掘り下げていくうえでの良い切っ掛けになるのではないだろうか。

また、蛇足を承知でひとつ付け加えておくならば、筆者も自分自身への褒美としてこのボックスを購入したのだが、これは70年代ロック原体験世代のみならず、さまざまな世代のロック愛好家たちへの気の利いたギフトにもなり得るように思われる。(増田勇一)


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