音楽ライターはアーティストにたいして一定の心理的、物理的距離を置いたほうがいい、と思っている。祀り上げる一方の文章は、説得力に欠けるからだ。
それでも人間である以上、どうしても斜に構えたり、悪く書いたりできない相手が出てくる。2022年の10月は、そのカテゴリーに入る数少ないアーティストがふたりも来日した。キッド・カディとブルーノ・マーズ。どちらもデビュー当時に取材し、下積み時代の話を聞いて以来、ずっと応援している。
ブルーノ・マーズは音楽制作、とくにメロディ作りにおいて天才であるのは広く知られているけれど、ステージパフォーマンスの凄さは目の当たりにしてみないとちょっとわからない。パンデミック以降、以前にも増してラスベガスのレジデンシー公演に力を入れていた彼が、オーストラリアと日本の東京と大阪でドームコンサートを行った。
2018年のさいたまスーパーアリーナのチケットはさほど苦労しないで買えたのだが、2022年は様子がちがった。全公演でおそらく20万席あったチケットは争奪戦。全力をふりしぼって2日間行った人間としてレポートを書いた。
老若男女が楽しめるブルーノ・マーズのコンサートは、なるべく多くの人に観てほしい。次回はぜひ、テレビ放送かストリーミングのオンデマンドを!!(池城美菜子)