ロックの正道

The Cheserasera『WHAT A WONDERFUL WORLD』
2014年06月04日発売
MINI ALBUM
The Cheserasera WHAT A WONDERFUL WORLD
「共感されることを前提としたロック」がどうにも苦手である。共感されることを狙ったあざとい歌詞や振る舞い、あるいは音そっちのけで歌詞や、歌詞にあらわれたアーティストの心情だの生き様などに己のアイデンティティを重ねてしまうような聞き方(しかできないこと)に、距離感を感じてしまう。

ザ・ケセラセラと名乗るこの新人も、「共感」というキーワードを抜きにして語ることはできないだろう。ある種の焦燥感や閉塞感、喪失感、終末感や孤独といったテーマを、つんのめるようなスピードと焼き切れるようなテンションの高いノイズに載せて歌う。だがこのバンドの場合、明らかに音の速度が言葉の速度を上回っている。言葉を替えていうと、言葉では表現しきれない思いの強さが、その演奏の速度と密度にすべてぶち込まれている。歌詞はそのあとからついてくる、という印象だ。歌詞を読んで納得するのではなく、まずはそのサウンドの疾走感に問答無用で持っていかれてしまうという、言ってみればロックの「正道」がこのバンドからは感じられる。このままスクスクと成長してほしい。(小野島大)
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