昨年の佐村河内騒動のあたりから何かとゴシッピーな意味で騒がしいゴーストライターというネタだけれど、このドラマではふたりの女のより普遍的な葛藤やコンプレックスに寄り添う内容で、andropの本ナンバーもそんな人の内省の繊細で残酷な襞をなぞる丁寧な作りになっている。《また今度生まれたらアナタがいい/鏡に映る自分が問いかける》とストーリーを反映した歌詞を、主体と客体を入れ替えながら歌うそれは、静かな湖面にぽつり、ぽつりと落ちて微かな波状を起こす雨粒のような、ミニマムで抑制の効いたサウンドで、その抑制の内側を覗きたくなる隙間、余白が残されているのがいい。
andropとしても驚きの新境地ではないだろうか。そしてそういう楽曲だからこそ、同収のストリングス・ヴァージョンで明らかになる隙間、余白が埋められていく様も秀逸なのだ。 『家族狩り』の“Shout”に続き、外部から投げ込まれた課題によってバンドの予期せぬ可能性が開花した一曲だと思う。(粉川しの)