カート・コバーンのドキュメンタリー映画『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』で使われた音源を収めたサントラ盤。この作品にはカートのプライヴェートな音源が使われているので、ある程度作品の体をなしたものを揃えた、いわゆる「レア音源集」とも違う。むしろ作りかけのデモや思いついたアイディアのメモ的なサウンドが集められた断想集のようなもので、だからこそホーム・レコーディングスと名付けられた宅録音源集なのだ。全31曲という膨大なトラック数で、中にはかなり生々しい音源も収録されているのだが、それでも楽曲の閃きという意味では天才的な輝きを見せるカートのドキュメントになっている。ブレット・モーゲン監督によるドキュメンタリー映像同様、カートのどこか病的な過剰さの文脈を探った音源集で、とても切ない記録である。映画ではカートが学校でハブられていく壮絶な経緯を綴ったアニメが紹介されるのだが、その語りがカートの朗読音源だったことを、今作を聴いて初めて知り驚いた。完璧なナレーションと緻密な語りになっていたからこそで、こうしたところでもその才能を痛感させる内容になっている。（高見展）