なんといっても今はなき溜池の東芝EMIスタジオでのレコーディングをモノクロで捉えた映像は貴重だ。軽く合わせているだけのように見えるのに、完璧な呼吸で滋味深い演奏を披露。キースのハーモニーの付け方などは見事の一言。“むなしき愛”、“ワイルド・ホース”など、ため息しか出てこない。メンバー同士の何気ない楽しげな会話も、ファンなら嬉しすぎるはず。
そしてクラブ・ギグの映像も素晴らしい。キースの「オレ達は元々クラブ・バンドだからな。(スタジアムなどでのライヴは)仕事の規模が大きくなって慣れただけ」という一言も納得の、密度の濃いプレイ。各地のファンの浮かれようも楽しい。
そして圧巻はアムステルダムのギグの前のバックステージで、ピアノだけをバックにミックやキースが“ダイスをころがせ”を歌うリハーサル・シーン。このバンドの底知れぬ力とキャリアの見事な集積。このシーンを観るためだけでも、このDVDを買う価値はある。数量限定のボックス・セットには、3公演それぞれのフル映像を収めたディスクを同梱。一家に1セットの必携盤。(小野島大)