12年の『アイ・ベット・オン・スカイ』以来、4年ぶり、通算11枚目となるダイナソーJr.の新作だが、冒頭のノイズを聴いているだけで心が落ち着いてくる。相変わらずシンプルかつヘヴィなギター・サウンドをベースにしたナンバーがたっぷりと詰まっているのに変わりはないけれど、全体のサウンドが少し透明度を高めているのと、それに同調したのか、Jのヴォーカルもすっきりとした印象の曲が多い。もちろん後ろでは奔放なギターが鳴り響いていて、その点での快感度は高い。また今回もJの書いた曲に加えルー・バーロウが2曲、作曲&ヴォーカルでリードをとっているのだが、ポップな“ラヴ・イズ…”などは巧くアルバムのアクセントになっていて、ダイナソーJr.流の変化を印象づける。
かつてのような勢いと、糸が切れてどこに飛び出していくのかわからないようなスリルはなくなったが、グランジ以降のアメリカン・ロックの中で確立されたサウンドが作る熟成感は特別。考えてみればソニック・ユースを始めとして、もちろんニルヴァーナ等もいなくなったなかでのこの健闘と唯我独尊ぶりは、やはり価値が高い。(大鷹俊一)
伝統の力
ダイナソーJr.『ギヴ・ア・グリンプス・オブ・ホワット・ヤー・ノット』
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