あまりの情報量の多さに目まいを覚える。ヴィジュアル・アルバム『エンドレス』、雑誌『ボーイズ・ドント・クライ』、そして本作『ブロンド』と、ほぼ同時期に異なる3形態のアイテムをリリースするやり方は単なるメディア・ミックスというよりも、音楽作品というものの価値や意味が激変する中、アルバムという概念を拡張し表現形態を更新する試みと言える。どれか一つを取り出して云々してもあまり意味がない。
とはいえ、音のみで聴かれることを前提とした『ブロンド』は、楽曲やサウンドの振り幅の大きさというよりもアルバムとしての強固な統一感があり、構成もより緻密に考えられているように思う。シャープでエクスペリメンタルな『エンドレス』より親密で温かい。カーペンターズの“遙かなる影”の秀逸なカヴァーが収録されているが、オリジナル曲の出来はそれ以上に素晴らしい。
フランクはここで自分の人生や生活について率直に語っているが、それは聴き手それぞれに自然に共有され、やがて世界のひとつを形作る。見たこともない風景なのに、なぜか懐かしく切なく、吐き気がするほど美しいアルバムだ。(小野島大)
吐き気がするほど美しい
FRANK OCEAN『BLONDE』
発売中
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