《さよならが喉の奥に つっかえてしまって/咳をするみたいに ありがとうって言ったの》。映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の主題歌であるこのシングルの表題曲の歌い出しはこうだ。どうでしょう。「うまい!」と山田くんに座布団5枚運ばせたくなるでしょう。これでいきなりガツーンとつかまれるし、《泣かない私に少しほっとした顔のあなた/相変わらず暢気ね そこも大好きよ》には「見透かされてるよ!」と戦慄が走るし。
にしても清水依与吏、男の一人称の曲がよいのはまだわかるが、女性の一人称で書いてもなんでいつもこんなにリアルなんだろう。女心をよくわかっている人だから、とは、ちょっと思えないフシもあるのに。ただ、男目線で書く時は男のダメさがにじむが、この曲のように女目線で書いても女のダメさよりも男のひどさの方がより表れるあたりが、清水依与吏というソングライターを解析するカギなのかもしれない、と聴いていて思ったりもした。愛だの恋だのに脳味噌を振り回されっぱなしの男のピュアなダメさを、誰はばかることなくさらけ出すカップリングの2曲も素晴らしい。(兵庫慎司)
この巧みさは何なんだろう
back number『ハッピーエンド』
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SINGLE