86年のヒット・アルバム『ターボ』リリース30周年を記念した、CD3枚組仕様のアニヴァーサリー・エディション。MTVやLAメタルの攻勢をギター・シンセの音色で迎え撃ったポップでモダンなサウンド・デザインの本アルバムは、質実剛健にメタル街道を邁進してきた印象の強いジューダス・プリーストの歴史上でも最大の異色作&問題作とされた――が。逆に言えば『ターボ』は、彼らが「ブリティッシュ・ヘヴィ・メタルという名の伝統芸」ではなく、80年代中盤のシーンの激変と向き合って己の音の切っ先を研ぎ澄ませていたことの揺るぎない証明でもある。
今作には『ターボ』の最新リマスター音源に加え、86年5月の米ケンパー・アリーナ公演のライヴ・テイクがCD2枚20曲にわたって収録されている。本国イギリスよりもアメリカで高く評価され支持された『ターボ』当時の空気感が、オーディエンスの抑え難い熱気からもリアルに伝わってくるし、“ターボ・ラヴァー”、“孤独の叫び”、“野獣のロックンロール”といった楽曲群の鮮烈な音像越しに変革を求めたメタル・ゴッドの「正しさ」が、今作には濃密に凝縮されている。(高橋智樹)
メタル・ゴッドの変革の正しさ
ジューダス・プリースト『ターボ-30thアニバーサリー・エディション』
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