実質的にはデイヴのソロと言っていい。賑々しい楽器のバンド・アンサンブルで魅了した、あのダーティー・プロジェクターズの姿はここにはない。かわりに基調となっているのは、現在のポップ音楽――昨今のR&Bやエレクトロニック・ミュージックのモードと呼応したスタイル。カニエ・ウェストやソランジュとの共作を通じて覚醒したデイヴのインスピレーションが、元バトルスのタイヨンダイ・ブラクストンら個性豊かなゲストの手を借りた、多様性に満ちたサウンドに落とし込まれている。

様々な音楽が混在し、その断片が複雑に重ね合わされた様相は、いかなるジャンル分けも拒むように奇抜で越境的。デイヴのヴォーカルもオートチューンで変調されている。しかし、そんな歌声を道標のようにして、無数の音が寄り添い、散らばり形を変えながらも、力強くドラマチックなメロディとグルーヴを紡いでいく。サウンドの造形はモダンかつ前衛的でさえある一方、その根底に流れているのは、古のフォークやゴスペルにも通じる厳かで痛切さに満ちたフィーリング。この音楽が、途方に暮れさせるのではなく心を捉えるのは、それゆえだろう。（天井潤之介）