「その日」を迎えるすべての人へ
藤巻亮太『3月9日』
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もともとはレミオロメン時代の楽曲で、友人の結婚式のために藤巻亮太が作った曲である。春の訪れを待ちわびるような温かなメロディは、不朽の名曲、そしてウェディングソングの定番として、多くの人の胸に刻まれている。今回のセルフカバーは、カロリーメイトのCMで描かれる、受験生を応援するストーリーに寄り添う楽曲としてリアレンジされたものだが、ブラスバンドを思わせるホーンアレンジが、学校生活のなつかしい風景を思い起こさせ、新たな旅立ちへのエールのように、楽曲を静かに盛り上げる。放課後、どこからか聞こえてきた吹奏楽部の練習の音。あの音のある風景から旅立つすべての人を見守るようなやさしいアレンジ。以前から卒業ソングとしても愛されてきた歌である。祝福の気持ちから作られたごく個人的な歌が、今や様々な場面で、様々な心境で「その日」を迎える人たちのための歌になっているのは、そのこと自体がひとつのストーリーである。藤巻の歌声も原曲をリリースした当時より穏やかで、自身が歩んできた道のりの分だけ、その歌はより温かく包み込むように響く。(杉浦美恵)