世界で最も穏やかな闘争

ジャック・ジョンソン『オール・ザ・ライト・アバブ・イット・トゥー』
2017年09月08日発売
ジャック・ジョンソン オール・ザ・ライト・アバブ・イット・トゥー
海洋汚染をテーマにしたドキュメンタリー映画『ザ・スモッグ・オブ・ザ・シー』のディレクションと並行して制作された、4年ぶり通算7枚目のアルバム。映画のテーマ曲“フラグメンツ”も収録されているが、重いテーマを抱えてはいても心地よいレイドバック感を見失わないJJの強靭な思想は健在だ。近年稀に見るほど素朴な音像のプロダクションは、ほとんどの楽器を彼自身が担当したという設計に依るところも大きいはず。テーマにしても音像にしても、敢えて意図的に「抜く」決断こそが、彼の表現の最も大切なヴァイブを支えている。

先行曲“My Mind Is For Sale”は秀逸な筆致でしたためられた歌詞と小気味よく弾ける曲調により、トランプ政権下のアメリカが向かう先を案じるナンバー。《いくつ「いいね」をもらわないと/僕は真実にたどり着けないんだろう》という現代的な苦悩が、心に立つさざ波からすべてを始めようとするJJのタフなポップ・ミュージックを裏付けている。幾つもの弦の音色が巧みに折り重なって響き合う“Big Sur”や、サイケ&ファンキーな“Gather”のソングライティングも素晴らしい。 (小池宏和)
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