トリッキーは2015年からベルリンに移り住んでいる。新しい土地では23時に寝て9時に起きる健康的な暮らしを送り、酒もやめて自身を見つめ直す日々をすごしたという。昨年には『スキルド・メカニクス』というアルバムを発表しているが、これはDJマイロやルーク・ハリスと組んだプロジェクトだったので、つまりは本作が、新たな環境を反映した初の純然たるソロ・アルバムと言っていいだろう。さらに、モスクワまで赴いて地元のヒップホップ・アーティストとのコラボレートを通じて完成させたトラックもある。
さすがに初期作品ほどの衝撃はないものの、アッパーもダウナーも織り交ぜたバラエティ感を持たせつつシャープな仕上がりで聴き応えは十分。前作ではポルノ・フォー・パイロスやコリィ・テイラーの曲を取り上げていたが、今回はホールの“ドール・パーツ”をカバーしていて、引き続きUSオルタナティヴ系ロックへの関心は持続している様子だ。
ゲスト・ボーカルもいつも通りに多彩で、ダリオ・アルジェント監督の娘アーシアや、ひさびさのマルティナ・トップリーバードが参加しているのも嬉しい。(鈴木喜之)
新天地から新地平を臨む
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