汲み尽くせぬブルー

キング・クルール『ジ・ウーズ』

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キング・クルール ジ・ウーズ
トム・ウェイツやイアン・デューリーも連想させるバリトン・ボイスと、ジャズやヒップホップ、ダブ、ポスト・パンクの影響が沁み込んだメランコリックなサウンドで注目を集めたキング・クルール。本作は2枚目となる4年ぶりのニュー・アルバム。その核となる音楽スタイルは大きく変わらないが、強いて言うなら2年前にリリースされた本名名義のアルバムのモードを汲むように、トリップ・ホップ〜アンビエントにも通じるアトモスフェリックなテイストが増して感じられるのが特徴。重く沈み込むようなダウン・ビートと、浮遊感をもたらす空間的なプロダクション/音響処理との狭間で宙づりにされ、あてどなく漂い続けるような感覚。

先日、フランク・オーシャンやアール・スウェットシャツと共作していたことが明かされて話題を呼んだが、なるほど両者の近作とも共通するアブストラクトで内省的なフィーリングが本作には感じられる。そしてほの暗く脈打つようなメロディにのせて歌われるのは、「自己破滅的な痛みや不安定な人間関係」といった極私的なテーマ。この青年が覗きこむ音楽表現の深淵は、まったく底が知れない。(天井潤之介)

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