しかし、このデラックス・エディションは、“Losing My Religion”で、大ブレイクを果たした後の選択とは思えない、死や悲しみに向うマイケル・スタイプの歌詞、エレクトリック・ピアノの起用、ジョン・ポール・ジョーンズによる美しいストリングスのアレンジなどむしろR.E.M.の奇怪さと偉大さを開陳し、それがくまなく至近距離から目撃できる内容になっている。
リハーサルなしとは思えない完璧なライブ音源も驚異的だし、世界初のドルビー・アトモスでミックスされた音源からは、これまで聴こえてこなかったギターやストリングスが目の前に現れ、彼らが今作で目指したその挑戦を改めて知る思いがする。さらに、今の真っ暗な世界に鳴り響くとマイケルの歌詞も声もすべてラブ・ソングに聴こえるところも、今作の奇妙な普遍性を物語っている。(中村明美)