夢を叶えたその先へ

フーバスタンク『フォーネヴァー』
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ALBUM
フーバスタンク フォーネヴァー
「夢見てきたことはすべて達成できた」とフーバスタンクのギタリストのダンは言う。そう断言できるだけのキャリアを築くのは大変なことだが、夢を叶えた後にどう続けていくのか、それもまたバンドの力が試される大きな問題だ。大ブレイクした2nd『ザ・リーズン』(04年)と、確かな成長を見せた前作『欲望』(06年)で、アメリカだけでなく日本を含む世界各国で成功を収めた彼らは、4作目となる本作を作るまでに1年半の休みをとったそうだ。周囲からの期待に加え、自分達でも成功して当たり前だと思い始めていたという状況から、原点に戻って音楽をやりたいという欲望を再確認するにはそれだけの時間が必要だったのだ。その結果彼らがリフレッシュして新たなパワーを得たことは、エッジの効いたギターとキャッチーなメロディが光る1stシングル“マイ・ターン”を聴けばすぐにわかる。

そして前2作を成功に導いたハワード・ベンソンともう一度タッグを組み、まさにフーバスタンクの得意とするサウンドをリフレッシュさせた彼らは、自らの領域を広げるチャレンジ精神も改めて手にしている。M6ではベックの父であるデヴィッド・キャンベルがストリングスのアレンジを手がけていて、ライトな感覚のサウンドが新鮮。ダンが好きだというU2やコールドプレイ、ポーティスヘッドなどにインスパイアされたM8、ヴァースとコーラスのギターにコントラストがあるM11もおもしろい。イメージ戦略に頼らず楽曲と演奏の力のみで勝ち進んできたと自負するバンドだが、彼らの本領発揮はむしろすべてを叶えた先にあるのかもしれない。(網田有紀子)
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