これまでファースト・アルバム『ハンドリトゥン』、セカンド・アルバム『イルミネイト』をそれぞれアメリカのチャート1位に送り込んできたカナダ出身のシンガー・ソングライター、ショーン・メンデスの最新作。ショーンが『ハンドリトゥン』でブレイクを果たした15年には、カミラ・カベロが初めてフィフス・ハーモニーから離れたソロ・プロジェクトとして、ショーンの“アイ・ノウ・ホワット・ユー・ディド・ラスト・サマー”に客演しているが、彼女がそのコラボレーションに乗り出したのはもちろん、ショーンがその時、最も旬な若手アーティストだったからだ。
そのショーンのサード・アルバムとなる本作は基本的にファーストとセカンドの内容をより確かなものにしており、エド・シーラン直系のシンガー・ソングライターとしての作風とパフォーマンスが全開となりつつも、彼ならではの持ち味も強く前面に打ち出し、大きな飛躍を見せつけるものになっている。たとえば、オープナーとなっている“イン・マイ・ブラッド”はショーンの最もベーシックなソングライティング・スタイルとなるアコースティックな弾き語りを軸としているが、これにダイナミックなモダン・ロック・サウンドとコーラスを加えることで楽曲のパワーをどこまでも増強させていて、このアルバムを体現するナンバーとなっている。一方で、よりR&B的な構造とグルーヴを持つ楽曲を打ち出していくのもショーンの強味であって、その究極の形となっているのが“ロスト・イン・ジャパン”のどこまでもポップなグルーヴだ。これを書くにあたってはジャスティン・ティンバーレイクを聴き込んだというショーンだが、実際に絶頂期のマイケル・ジャクソンを思わせる滑らかなファンク・サウンドに仕上がっていて、恋の相手を日本での逢引へと誘う甘い官能が魅力的な曲になっている。
あるいは、ショーンの得意とする楽曲モチーフにビートやグルーヴを重ねていく“ユース”でカリードと共演してしまうところなどはさすがに北アメリカで活躍する若手アーティストといった感じで、暗いニュースに見舞われることの多い今の時代においても、自分たちの若い声が屈服させられることはないと歌い上げるメッセージ・ソングとなっている。そのほかにも聴きやすさと完成度をともに備えた曲が満載で、本人の充実度が嫌というほどに伝わってくる。さらに驚異的なのはこれだけ力強いアルバムを作ってきたショーンがまだ19歳だということで、これからの可能性は果てしない。(高見展)
『ショーン・メンデス』の詳細はUNIVERSAL MUSIC JAPANの公式サイトをご確認下さい。
ショーン・メンデス『ショーン・メンデス』のディスク・レビューは現在発売中の「ロッキング・オン」7月号に掲載中です。
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