今敢えて歌うウィルコの愛

ウィルコ・ジョンソン『ブロウ・ユア・マインド』
発売中
ALBUM
ウィルコ・ジョンソン ブロウ・ユア・マインド

前作となる14年の『ゴーイング・バック・ホーム』をザ・フーのロジャー・ダルトリーと制作した際、ウィルコ・ジョンソンは遺作としてこのアルバムに取り組んだはずだった。しかし、患部摘出手術を経て膵臓がんかと思われた病を乗り越えたウィルコは、見事に新作を引っ提げて戻ってきたのだ。しかも、前作がカバーとセルフ・カバーで構成されていたのに対して、今回は30年ぶりの新曲群だけを収録したという喜ばしい内容で、ウィルコの復活を高らかに告げる素晴らしいアルバムとなっている。

曲はR&Bとブルースをベースにしたごっついグルーヴを誇るトラックが揃っていて、ウィルコの鋭いキレキレ・ギターと太いボーカルが炸裂する、待ってましたというものばかりのものが揃っている。たとえば、冒頭の“ビューティ”などはそんなウィルコの切れ味鋭いブルース・リフをいきなりぶちかますナンバーだが、ここで描かれているのはかつての青春時代の日々で、特に自分と結婚した妻アイリーンの美しさを歌っている。しかし、ウィルコはアイリーンを04年にやはりがんで喪っていて、こういうところに今回の作品の持つ達観的なパワーと深さがたたえられているのだ。

もちろん、自身が死の際に瀕した体験を汲んだ歌詞も多くあるはずだが、いったん人生の終わりを覚悟した心境から書いたせいなのか、アイリーンを思わせる愛の歌が多いのがとても感動的だ。特に「嘆き」を意味する“ラメント”はお馴染みのディラン・ハウ(Ds)とノーマン・ワット・ロイ(B)によるどこかニューオーリンズ風のリズム・セクションに乗せて、ウィルコ・ジョンソンが抒情的なギターの調べを奏でるインストゥルメンタルとなっていてただ素晴らしい。(高見展)



『ブロウ・ユア・マインド』の詳細はこちらの記事より。

ウィルコ・ジョンソン『ブロウ・ユア・マインド』のディスク・レビューは現在発売中の「ロッキング・オン」7月号に掲載中です。
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ウィルコ・ジョンソン ブロウ・ユア・マインド - 『rockin'on』2018年7月号『rockin'on』2018年7月号
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