2003年に逝去したジョニー・キャッシュの死後に発見・発表された詩集から選ばれた詩に多様なアーティストが曲をつけ編まれたアルバム。参加しているのはエルヴィス・コステロから実の娘ロザンヌ・キャッシュ、T・ボーン・バーネット、アリソン・クラウス、ロバート・グラスパーまでと、老若男女実にバラエティに富んだ人選になっているのだが、音楽の振れ幅はそれ以上だ。カントリー、フォーク、ブルーズ、ロック、ゴスペル、ジャズ、アメリカにおける大衆音楽のほとんど全てがここに内包されていると言っていい。当然、歌唱も演奏もサウンド・プロダクションも一級品が揃えられている。また、ジョニー・キャッシュは、あらゆるジャンルで、原曲の価値を更新するような名カバーをいくつも残した人だった。そんな彼の作品を、彼の後に続く音楽家達が新しい歌にする。そして、この歌達もきっと、この先の誰かに歌い継がれていく。つまり、音楽がどのようにして生まれ、どう継承されていくのか、このアルバムはそれを分かりやすく示しているのである。それはもちろん、ジョニー・キャッシュという人がそうした、歴史の大河を横断し、そしてその一部となることにどこまでも意識的にキャリアを歩んできたからこそに他ならない。なお、本作の目玉の一つとなっているのが、昨年この世を去ったクリス・コーネルの生前最後の録音のうちの一曲が収められていること。クリスがその最期にボーカリストとしてどれだけの高みに達していたかを証明するような名演で、彼はこう歌う。《時々、いつだってきっと あんたには分かりやしなかった 俺がどう思っているかなんて》。キャッシュの残した言葉が、そのままクリスの遺した言葉になっている。これはもう、どうしたって泣いてしまう。(長瀬昇)
『ジョニー・キャッシュ:フォーエヴァー・ワーズ』の詳細はこちらの記事より。
V.A『ジョニー・キャッシュ:フォーエヴァー・ワーズ』のディスク・レビューは現在発売中の「ロッキング・オン」7月号に掲載中です。
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