スラッシュ四天王の中では小物……なんていう認識の人もいるかもしれないが、パンクな資質を最も色濃く内包していたアンスラックスは、個人的にずっとお気に入りのバンドだった。ともあれ、『ステート・オブ・ユーフォリア』の30周年記念盤が、3月に日本で行なわれるダウンロード・フェスへの参加決定に合わせて国内発売されることになったのは目出度い。
前作『アマング・ザ・リヴィング』とともにバンドの代表作とされているが、初めて聴いた時には、そちらに比べて正直やや平板な印象を受けた。ただ、当時の自分は、パブリック・エナミーと共演するような形でラジカルさを発揮してもらう方向性ばかりを彼らに期待していたので、そのせいかもしれない。そうした感覚から抜け出た今あらためて向き合うと、複雑でスケールの大きな構成など別の魅力が輝きを増して感じられ、新鮮に聴き直すことができた。それに、トラストのカバーながらアンスラックスの看板ナンバーとなった、パンク魂あふれる4曲目はやっぱり名曲だ。なんでもオリジナルの作詞にはシャム69のジミー・パーシーが協力していたそうで、すごく納得。カバーといえば、今回ボーナス・トラックになったキッスやセックス・ピストルズ(原曲は民謡)やシャンテイズなどの選曲でも、アンスラックスのハミ出しっ子なユニークさを再実感する。
このエディションでクリエイティブ・ディレクターを務めたチャーリー・ベナンテ提供によるディスク2収録のレア音源は、ほぼ歌なしのデモで、これはさすがに、マニア以外のリスナーにはキツいかも……と思っていたら、最終トラックで数分の空白を経て、最高のハードコア・パンクが鳴らされるオチが付いていたので、ぜひ最後まで頑張って聴いてください。(鈴木喜之)
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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。
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