アグレッシブな量子化と記号化

サーカ・ウェーヴス『ワッツ・イット・ライク・オーヴァー・ゼア?』
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ALBUM
サーカ・ウェーヴス ワッツ・イット・ライク・オーヴァー・ゼア?

2015年のデビュー作『ヤング・チェイサーズ』から前作『ディファレント・クリーチャーズ』までの2年間でローファイなガレージ感を勢いよく脱ぎ捨ててヘヴィ&タイトな変身を遂げたサーカ・ウェーヴス。その2年後に届いた今作3rdアルバムは、己のロックの在り方すべてを量子化&記号化したような“ソーリー・アイム・ユアーズ”で幕を開ける。彼らの大きな魅力でもあった「揺らぎもブレもグルーヴとして息づくバンド・サウンドの生々しさ」を極限まで排し、真っ向勝負のスタジアム・ポップを響かせるこの曲は、2010年代UKロックの青春性の象徴的な存在だった彼ら4人の劇的進化を完膚なきまでに厳然と物語っている。

2nd同様にスマパン/フーファイ/アークティックなどを手掛ける名匠アラン・モウルダーとのタッグで制作された本アルバム。ジョー・ファルコナー(G)も「“ロック・バンドだから”という意識を捨てて、良いと思うものはすべて取り入れた」、とコメントを寄せている通り、ニュー・ウェーブ・ポップの10年代的解釈とでも言うべき“ムーヴィーズ”、ブルース・ロックのサウンド・デザインをゼロから組み上げたような“ミー、マイセルフ・アンド・ハリウッド”、人力ダブステップ的なビート感とともに壮大なスケールのロック絵巻を描き上げる“ビー・サムバディ・グッド”……などなど、ハイパーな音像の中でバンドのアイデンティティを解体&再構築したような意欲作。と同時にその変化は、キエラン・シュッダルというシンガーの卓越したポップ感を、バンドのさらなる推進力として極限まで活かしきるためのアグレッシブな挑戦であることも窺える。その革新の真価はぜひとも、自身4度目となる今年のサマソニのアクトで確かめたい。 (高橋智樹)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。
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サーカ・ウェーヴス ワッツ・イット・ライク・オーヴァー・ゼア? - 『rockin'on』2019年5月号『rockin'on』2019年5月号
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