「どうせ残りモノでしょ?」と、侮ることなかれ

ドレイク『ケア・パッケージ』
発売中
ALBUM
ドレイク ケア・パッケージ

2019年のヒップホップ界の頂点に君臨するドレイクは、これまでに5作のメジャー・アルバムを発表してきた。そのどれもがヒップホップ史に燦然と輝く傑作である……ことは確かなんだけど、その一方で、ドレイクの本当のすごさは、彼の音楽を「アルバムだけ」で聴いているリスナーには、たぶん半分ほどしか伝わってないんじゃないかと思う。

というのも、SNS世代の申し子であるドレイクは、アルバムとシングル以外にも、ネット上でしょっちゅう「新曲」を無料配布していて、場合によっては、そっちの方がファンの間でずっと深く愛されているのである。配布の目的にもいろんなパターンがあり、時には新作の「プロモーション」として、時には大ヒットの「お礼」配信として、時にはファン宛ての「レター」代わりに……普段は明かさない本音をポロッと明かすことも多く、それもまた、ファンにとってはバズれる「ネタ」なのだ。

本作は、ドレイクのまさに「その手の曲」を集めたコンピレーション盤で、過去にSoundCloudなどで発表されながら、正式には一度もリリースされてない楽曲を全17曲収録したもの。時期的には2010年~16年の発表だけど、少しややこしいことに、曲の収録順と実際の発表年順は一致していない。なので、ここでいくつか整理してみよう。

まず、一番古い2010年に発表されたのは、“I Get Lonely”と“Paris Morton Music”の2曲。デビュー・アルバムの少し後に発表されたもので、まだまだ「蒼さ」の残っているところが逆にいじらしい。13年に発表された“Girls Love Beyoncé”、デスティニーズ・チャイルドの“セイ・マイ・ネーム”をサンプリングしてて、ファン人気が特に高いナンバー。正式リリースされなかった理由は、おそらくサンプリング使用料がべらぼうに高かったせいだろう。

ビヨンセ繋がりで言うと、彼女と共演した“Can I”は、15年に未完成版がネット上に流出してしまった曲で、それがなければ、普通に16年のアルバム『ヴューズ』に収録されてたはず。13年にJ.コールと共演した“Jodeci Freestyle”は、「自閉症」に関する不適切表現があったため、ふたりとも謝罪したという、いわくつきのナンバー……と、そんなふうに、本作のほとんどの曲には「後日談」的なエピソードがあれこれある(発表の場がSNS上だけに、反響も「リアル」なんだ)。新規のファンの方は、時代を遡って、その辺の背景を追ってみることを強くおススメしたい。ドレイクの「裏」ベスト盤は、表ベスト盤よりも、ディープなドラマでいっぱいだ。 (内瀬戸久司)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。
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ドレイク ケア・パッケージ - 『rockin'on』2019年10月号『rockin'on』2019年10月号
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