模索の時期の記録

フー・ファイターズ『01050525』
発売中
EP
フー・ファイターズ 01050525

フー・ファイターズのアーカイブ・シリーズ「フー・ファイルズ」の新EP。先にリリースされた『02050525』に5曲を追加した拡張版で、『イン・ユア・オナー』(2005年)の時期のB面曲、カバー、デモ、ライブ音源が収録されている。同アルバムは、エレクトリック・ディスクとアコースティック・ディスクの2枚組だった。そんな模索の時期だっただけに、このEPで聴ける曲も方向性は様々だ。

そのうちカバーは3曲で、冒頭に置かれたのは、ザ・パッションズ“アイム・イン・ラヴ・ウィズ・ア・ジャーマン・フィルム・スター”。ニュー・ウェイブの女性ボーカルによる81年の曲を、リバーブを効かせたサウンドで気だるげに歌っている。また、90年代前半に活動したパンク・バンドでエモの先駆けのひとつともいわれるジョーブレイカー“キス・ザ・ボトル”を選んでいる。ギターのイントロや歌メロがキャッチーな曲だ。かと思えば、クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル“ボーン・オン・ザ・バイヨー”も登場する。60年代末のこのブルージーなアメリカン・ロックをオリジナルほど泥臭くなく、威勢よくカラッと演奏している。異なる時代の曲を気の向くまま試し、カバーした印象だ。

『イン・ユア・オナー』がそうだったようにこのEPでは、カバー、オリジナルともエレクトリックでロックな面とアコースティックでメランコリックな面が同居している。そして、同アルバムで前者を代表する“ベスト・オブ・ユー”を観客が合唱し、後者を代表する“レイザー”が朴訥に披露されるライブ音源が、それぞれ収録されているのが高ポイント。この2曲があることで、当時のバンドがどんな雰囲気だったか、ふり返りやすくなっている。(遠藤利明)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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フー・ファイターズ 01050525 - 『rockin'on』2020年1月号『rockin'on』2020年1月号
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