ロキシー・ミュージック人気が最初のピークに達していた時期に、ロンドンを代表する名コンサート会場のひとつ=ロイヤル・アルバート・ホールで開催されたブライアン・フェリーの記念すべき初ソロ・ショウ。その模様を45年後に追体験できるなんて――こんなお宝がまだあったのか!と思わず盛り上がってしまう抜群なライブ盤だ。
この時期のブライアン・フェリーはとんでもない勢いで飛ばしていた。72年にデビューしてからロキシーは4th『カントリー・ライフ』(74)まで傑作を連打し、73年からソロも2作発表。本作を構成するそのソロ2枚はカバーを主体にした内容とはいえ、アイデアとインスピレーションでみなぎっていたのは間違いない。そのハイパーなみなぎりは本作に朗々と響き渡る脂の乗り切った歌唱だけでも十二分に伝わってくるし、ビブラートもばっちり震えていて泣ける。昨今の枯れた歌声も魅力的とはいえ、これを聴けば彼がなぜイギリスの生んだもっともユニークなシンガーのひとりであるかが、一発で納得できると思う。スタンダードに50年代ポップ、ソウルとロックの古典と知名度の高い楽曲が並んでいるので若いリスナーもミックステープ的に楽しめる内容だし、マンザネラ/トンプソン/ジョン・ポーターのロキシー組+当時クリムゾンのジョン・ウェットンの布陣にオーケストラまで加わった贅沢かつダイナミックな演奏はストーンズの①とディランの⑪を筆頭に前衛プログレ、ポップ、ロックンロール、クラシック等いくつもの層を痛快にシャッフルする。過去を遡りひねることで未来へのワープを果たした当時のブライアン・フェリーの特異な美学を堪能できるこの作品、映像が収録されていたとしたら是非(×100)発表してもらいたいところ。 (坂本麻里子)
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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。
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