タイムレスな傑作

マズ『マズ』
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ALBUM
マズ マズ

一昨年の『マローダー』でみごとに初期サウンドを現代へとアップデートして見せたインターポールの核、ポール・バンクスによる新プロジェクト、マズのファーストには、懐かしさと安らぎが詰まっていて、とても穏やかな気持ちにさせられる。ポールが高校時代に過ごしたスペイン、マドリッドに転校してきたジョシュ・カウフマンとニューヨークで再会後も音楽的な交流を続け、ふたりとも一緒にやったことがあるドラマーのマット・バリックを誘い込んでのトリオで、60〜70年代のマイクなどの機材をベースにレコーディングされ、これが“穏やか感”のもとになっている。

複雑なプロダクションや、多層的な音像を作ることが簡単な時代だからこそ、アナログでしか出せない質感を音に求めるのはよくある話だが、マズが優れているのは、まず楽曲の時点で、サウンドが目指すところを想定し、さまざまなアイデアを盛り込んでいる点で、それが音の彼方から立ちのぼってくる。

レイドバックした果てのような曲やアンビエントのニュアンスを施したものなど、インターポールにおけるポールの姿からすると異質と思えるかもしれないが、逆にこうした感覚が根底にあるからこそあのアプローチが豊かなものになっているんだと納得がいく。ミニマルなピアノに始まり、ドラムやボーカル、コーラスが徐々に周囲を色づけていくアルバムのど真ん中に置かれた“ブロークン・タンバリン”が、もっともこのプロジェクトならではとの感がするが、他にもコンパクトなギター・ロックからフォーク・タッチなど曲のタイプは予想以上に幅広く、そして音をあまり積み重ねることなくシンプルにレコーディングされているので時代性抜きに楽しめる。これは今後もぜひやってほしいトリオだ。 (大鷹俊一)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
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マズ マズ - 『rockin'on』2020年7月号『rockin'on』2020年7月号
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