少しでも何かできないかと思ってライブハウスが出しているTシャツを買い漁ったりしているのだが、それが何になるのか、と届いた荷物を見るたびに感じる。最後にライブに行ったのはいつだったっけ、とだんだん思い出せなくなっている。汗と笑顔まみれの日々ははるかかなた、冗談じゃねえぞと思いながら、だんだんと慣れていっている自分に気づいたりもする。でもこの曲を聴いて横っ面を張り倒されたような気持ちになった。メランコリックなアルペジオを突き抜けてくる2ビートとメタリックなギターリフ。彼ららしいポップなメロディと、Dragon Ashごしにブルーハーツを呼び覚ますような《時の流れに身を任せているだけじゃ笑えない》というフレーズ、そして《始まりはすぐそこさ》というストレートでポジティブなメッセージ。ツインボーカルの掛け合いがまるでコール＆レスポンスのようにこちらに手を差し伸べてくる。ライブハウスの高揚を音源だけで伝えるには、ここまでの直球でなければダメだ。この曲がライブハウスで鳴り響く日のための、パンクバンドからのあらかじめの「勝利宣言」。（小川智宏）

『ROCKIN'ON JAPAN』2020年7月号より