《ささやかでも 今は弱い光でも/響く速度で 声を聞かせて/届け どこまででも》(“ダイアローグ”)――昨年ロンドンでレコーディングされていたという表題2曲が、コロナ禍によってリリース延期となった今なお、いや今こそ何かの黙示録のように響いてくるのは取りも直さず、ASIAN KUNG-FU GENERATIONがいつだって僕らの孤独や不安と向き合い、誰もが音楽で「その先」へ踏み出すことを志し続けてきたから、に他ならない。『Dororo / 解放区』以来約1年5ヶ月ぶりのCDリリースとなる両A面シングルの今作。確かな足取りの如きミディアムテンポのビートで心の闇に灯をもたらす“ダイアローグ”。塩塚モエカ(羊文学)をゲストボーカルに迎え、失われたセンチメントを狂おしく追い求める“触れたい 確かめたい”――。アジカンのシングルの中でもひときわ内省的な質感を備えた今作は同時に、スタイルや技法ではなくマインドで時代に/リスナーに作用してきた後藤正文の姿勢を明快に象徴するものだ。CDにのみ収録の山田貴洋作曲のカップリング曲“ネクスト”も聴き込み甲斐のある秀逸な楽曲。(高橋智樹)
アジカンの「正しさ」の証明
ASIAN KUNG-FU GENERATION『ダイアローグ / 触れたい 確かめたい』
2020年10月07日発売
2020年10月07日発売
SINGLE