変化と不変の証

ベル・アンド・セバスチャン『ホワット・トゥー・ルック・フォー・イン・サマー』
発売中
ALBUM
ベル・アンド・セバスチャン ホワット・トゥー・ルック・フォー・イン・サマー

2019年のワールド・ツアーからベスト・テイクを厳選した2枚組ライブ・アルバム。話題となった船上ライブ「Boaty Weekender」など、すべてのライブ・テイクを聴き返して、全23曲を選び抜いたという。ベスト盤のように感じられるのは、“My Wandering Days Are Over”など、珠玉の名曲が畳みかけてくるから、だけではない。というのも、今作からは、彼らの芯にあるものが見えてくるのだ。

再生した途端に聴こえる、作品を構成するひとつの要素と言える大歓声、そしてアーティスト写真には、メンバーがどこにいるのかわからないほどステージを埋め尽くすたくさんのファン。今、失われているものが、まざまざと浮かび上がってきて切なくなる。その切なさを表現することで、今の彼らにとって、ライブがいかに大切かを、今作は伝えているのだと思う。遡りに遡るが、内省的なイメージをまとっていた過去の彼らと、今の彼らはまったく違う、というメッセージにも感じられる。それでいて今作が、そんな遠い過去も、ライブをやっていた近い過去も、ライブが思うようにできない今も、彼らの音楽から味わえる至福感は変わらない、と教えてくれることもたしかだ。

なお、今作のリリースを機に公開された“The Boy With The Arab Strap”のMVは、今作のライブ音源に、メンバーそれぞれがお部屋やお庭で演奏する映像がのる——つまり、コロナ前とコロナ後が合わさったものになっている。ここからも、不思議と違和感より、どんな状況でも音楽を楽しむだけ、という彼らの揺るぎなさが見えてくる。

音楽性も活動的にも、原点がシンプルでピュアなバンドは強い。そう確信するとともに、やっぱり、再びこの至福がたくさんの人と同じ場所で共有できる日を願ってやまない。(高橋美穂)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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ベル・アンド・セバスチャン ホワット・トゥー・ルック・フォー・イン・サマー - 『rockin'on』2021年1月号『rockin'on』2021年1月号
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