いきなり本格化した、どこまでも前向きで温もりのあるUK初インディR&B

アーロ・パークス『コラプスド・イン・サンビームズ』
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ALBUM
アーロ・パークス コラプスド・イン・サンビームズ

昨年最大のブレイクを果たしたイギリスのアーティストであり、BBCのサウンド・オブ・2020の候補にもなっていたアーロ・パークスのデビュー・アルバムだが、改めて今回の楽曲群のメジャー感というか、聴きやすさにすごいと言わざるを得ない内容となっていて、あまりにも素晴らしいファースト・アルバムだ。19年のEP『Super Sad Generation』と『Sophie』はすでにアーロの資質と可能性をよく開示する内容にもなっていたが、たとえば「超絶悲しい世代」というタイトルからもわかる通り、どこまでも内向きな作風であり、彼女のパフォーマンスもまた、わかる人だけに囁きかけていくという性質を帯びているといえなくもなかった。

それはまた、アフリカ系でありながらベッドルーム・ミュージックに没入してしまうという、かつてのライトスピード・チャンピオン(ことブラッド・オレンジ)が抱えていたような疎外感や彼女自身のセクシュアリティが生み出す疎外感に起因していたことなのかもしれない。しかし、そうしたモチーフも含めて、広く伝えていかなければならないという、根本的な態度変更があったことが今回の楽曲群を聴いた瞬間から明らかになる。だからといって、パフォーマンスや楽曲が急にアグレッシブになったというわけではない。ただ、俯いたまま歌うのはもうやめたというようなことなのだ。しかし、それだけでも、おそろしく表現がわかりやすくなることはあって、このアルバムはまさにそういう作品だ。

たとえば、2曲目に収録されている“Hurt”などは誰かが抱えている心の痛みとどう向き合っていくかという内容になっているのだが、その痛みは、今は辛くてもいずれ消える、そんなに長くは続かないと言い聞かせていく歌で、こういうメッセージは明解にメッセージとして伝えていかないとならない性質のものなのだ。それをここまで、サウンドも含めてわかりやすく仕上げてきたことは素晴らしいとしか言いようがない。サウンドは全体的にヒップホップをベースにしたポップR&Bとしてまとめられていて、プロデューサーのルカ・ブチェラッティの、ソリッドでいて温かみのあるサウンドを全編貫いた手腕もまた見事だ。

基本的にこのアルバムは、人間なら普通どこかしらちぐはぐなところがあって当たり前なのだから、それで起きる問題も前向きに受け入れていこうというテーマに貫かれている。そうした意味で、最終曲“Portra 400”の、痛みを伴ったなにかから虹を紡ぎ出していこうと思うというコーラスはとても感動する。(高見展)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。
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アーロ・パークス コラプスド・イン・サンビームズ - 『rockin'on』2021年2月号『rockin'on』2021年2月号
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