自身で「ヤバいものが出来ました」とコメントしていたが、確かにこれはヤバい曲だ。何がヤバいかと言うと、要するにこれは
星野源がもう一度攻めに出る号砲だからだ。壊れたメトロノームのような高速テンポのソウルミュージックと、『スーパーマリオブラザーズ』の35周年テーマソングということで取り入れられた8ビットサウンドがスターを取ったマリオみたいにキラキラ光りながらBダッシュする3分54秒(スーパーキノコの効果音も入っている)。そのアッパーなテンション感にもなんだか久しぶりに出会う感じがするが、それに加えてそこで歌われていることがめちゃくちゃリアルで自己言及的なことに驚く。《誰も見ない場所から 一筋の/未知を創り出そうぜ そうさYELLOW MAGIC》というサビは今を生きるすべての日本人へのメッセージであると同時に星野源というアーティストの基本姿勢だし、《死の淵から帰った 生かされたこの意味は/命と共に 遊ぶことにある》というのは彼の根本にある哲学だ。『Same Thing』を超えて、また新しい季節が巡ってきたような予感がする。(小川智宏)
『ROCKIN'ON JAPAN』4月号より