オリンピックの閉会式、フィールドのど真ん中で華麗なターンテーブル捌きを披露するDJ松永は文句なしに最高だったし、そのあと共演した
スカパラや
miletとともにステージに上がり、所在なさげに立っている彼の姿はもっと最高だった。これだよなあ、この落差と振り幅だよなあ、
Creepy Nutsって。売れれば売れるほど、脚光を浴びれば浴びるほど、その落差のコントラストはいっそう鮮やかになっていくし、そのコントラストに自覚的になっていく。このアルバムはまさにその落差の中で生まれた作品だという気がする。“Lazy Boy”や“バレる!”のような歌メロも華やかなポップソングも、“顔役”や“15才”のようなハードでダークなヒップホップも、明らかにその高度と深度を増している。そしてそのど真ん中にいるのが“のびしろ”という新曲。R-指定が30歳の節目に書いたというこの曲には、いまだ揺れ動きながら可能性を信じて毎日を送る等身大の彼とそこから見える風景が刻まれている。それにしても驚くのはRのスキルである。ラップはもちろん、歌も抜群に進化している。(小川智宏)
『ROCKIN'ON JAPAN』10月号より