菅田将暉主演のドラマ『ミステリと言う勿れ』の主題歌として、すでに大きな話題となっている
King Gnuの新曲“カメレオン”が音源リリース。ドラマでは単なる主題歌というより、物語のクライマックスで人間の多重性、複雑さに思考を至らせるための、ひとつの役割を担う存在にもなっている。そのフル尺音源のリリースを待ちわびていた。
井口理(Vo・Key)の美しいファルセットの歌で始まるこの楽曲は、記憶の深いところに潜るような、ヴィンテージなピアノサウンドが耳に残る。音の余白にある残響が朧げな追憶を引き連れてくるように楽曲を支配し、井口の歌声はその追憶を手繰り寄せるように切なく響く。その歌声の繊細さ、切実さに心震える。ずっとこの美しいサウンドと歌世界に浸っていたいと思う。けれど《僕の知らない君は誰?》と突然カットアウトで終わるエンディング。そのあとに残るのは記憶の残滓のような余韻。なんという歌だろう。その余白と余韻にこそ、人間の愛や業や悲しみが詰まっているような気がする。この曲を聴いたあとは、しばらく他の曲を耳に入れたくないと思ってしまうほど。(杉浦美恵)
『ROCKIN'ON JAPAN』4月号より