迷子たちに捧ぐ、ルーツの物語
amazarashi『七号線ロストボーイズ』
発売中
ALBUM
昨年のシングル『境界線』(表題曲はTVアニメ『86―エイティシックス―』OP)を経て、2年ぶりとなるフルアルバム。秋田ひろむは、これまでにも地元青森の原風景を歌の中に織り込むことがあったし、それは作家としてのアイデンティティを担う大切な一要素でもあったのだが、今回はそれをドン、とアルバム全体のコンセプトに据えている。僕のように青森とほとんど接点を持たないリスナーにさえ、強烈な物語性と情景喚起力をもって視界を共有させるアルバムだ。秋田ひろむにとっての青森は、必ずしも甘く優しい、温かな記憶が刻まれた場所ではない。しかしそこで培われた思考と感情は、混迷した世界をタフに生きるための確かな動機となり、歌となって鳴り響いている。生まれ育った場所は違えど、この感覚に強いシンパシーを抱くリスナーは多いはずだ。《自分偽ることを咎めるあの声は 故郷の残像か 己の心か》と歌われた“境界線”も、アルバムの1ピースとしてバシッとハマっている。楽曲ごとに練り上げられた、多彩なサウンドのアイデアも素晴らしい。これぞ
amazarashi、新たな代表作の誕生だ。(小池宏和)
『ROCKIN'ON JAPAN』5月号より
2022.04.13 08:00