終わるまで終わらない「生」について

BREIMEN『FICTION』
発売中
ALBUM
BREIMEN FICTION
たとえば、優れた一本の映画や一席の落語に触れた時に、「ああ、人間ってこんなにも悲しくて愚かな生きものなんだ」と、その救われなさに深く感じ入り、しかし、そんな重く沈み込むような実感が、なんとも温かく優しい気持ちを引き連れてくることがある。どんな高尚なメッセージよりも、そこに「人間」が描かれているという事実が、人を心穏やかにすることもある、ということ。このBREIMENの3作目のフルアルバムがもたらすのは、まさにそうした実感である。

なんて生々しく「人間」の匂いが漂う音楽だろうか。美しくも痛ましく、享楽的だが孤独で、語るべき言葉を持ちながらも、無意味さを弄んでもいる。ポップミュージックは、バンドというスタイルは、未だこれほどのイリュージョンを描き得るという、希望すら感じる。資料によれば、制作にあたりバンドは「リアリティ」の追求を指針としたようだが、結果的に本作は『FICTION』と名付けられた。その「虚」と「実」が錯綜した姿こそがまさにリアルなのだ。巻き戻すことのできない生が、取り返しのつかない夢が、ここにはある。(天野史彬)

公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする